在宅療養を支える訪問看護師の役割は?仕事内容や向いている人の特徴について
記事掲載日:2024/03/06
近年需要が高まる「在宅療養」。訪問看護師は在宅療養を支える職種のひとつであり、重要な役目を担っています。今回は、在宅療養を支える訪問看護師の仕事内容と1日のスケジュール例、メリット・デメリットを解説。在宅看護に興味がある方、転職を検討中の方は参考にしてみてください。
- 在宅看護とは?
- 在宅看護において看護師が担う役割
- 訪問看護師の主な仕事内容
- 在宅看護師の1日のスケジュール例
- 訪問看護師として働くメリット
- 訪問看護師として働くデメリット
- 訪問看護師に求められる資格・経験
- 訪問看護師に向いている人の特徴
- 在宅療養を支える訪問看護師として転職を目指すために
- 訪問看護師の仕事に関するよくある質問
- 在宅看護を担う訪問看護師は将来性の高い仕事
在宅看護とは?
在宅看護とは、自宅で療養生活を送る患者さまが、在宅での生活が続けられるように看護ケアを行うことです。基本的に、患者さまのご家族が中心となって日常の看護ケアや介護ケアを行い、看護師はそのサポートをします。
病気や障がいのため自宅で療養生活を送る方や、慣れ親しんだ自宅で最期のときを迎えたい患者さまなどが主な対象です。
【在宅看護の基礎知識】
在宅看護の対象者 | 在宅看護が必要な疾患・障がいを抱えるすべての年代の人 |
---|---|
制度の種類 |
【介護保険】 主治医から訪問看護が必要と判断された方のうち、下記を満たす方 ・65歳以上かつ、要支援・要介護の認定を受けている ・16特定疾患を持つ40歳以上65歳未満の方で、要支援・要介護の認定を受けている 【医療保険】 主治医から訪問看護が必要と判断された方のうち、下記を満たす方 ・介護保険の給付対象外 ・悪性腫瘍や難病などを抱えている ・医師の特別指示がある |
在宅看護のメリット | ・親しみある自宅で療養生活を送れる ・患者さまのQOLを尊重できる ・通院の負担やストレスを軽減できる |
在宅看護のデメリット | ・病院よりも医療機器やスタッフ数などの面でサポート体制がやや劣る |
在宅看護と訪問看護の違い
在宅看護 | 訪問看護 | |
---|---|---|
特徴 | 患者さまの自宅で看護ケアを行うこと | 患者さまの自宅や利用する施設などに出向き、看護ケアを行うこと |
ケアを担う人 | 患者さまのご家族など | 看護師など専門スタッフ |
在宅看護は、基本的に患者さまのご自宅で、患者さまのご家族が行う看護をいいます。
一方で訪問看護は、看護師など資格を持つ専門スタッフが、患者さまのご自宅や利用している高齢者施設などに出向いて、医療的なケアや看護ケア、サポートを提供するサービスです。
在宅看護が患者さまに対する「ケアそのもの」であるのに対し、訪問看護は看護師などが提供する「サービス」の一種という点に違いがあります。
在宅看護において看護師が担う役割
在宅看護では、基本的に患者さまのご家族が中心となって介護やケアを行います。しかし、その負担は大きく、ご家族だけでは患者さまの療養生活を支えきることが難しいのが現状です。
看護師は「訪問看護」を行って、患者さまの療養生活をサポートする役割を担います。
訪問看護では、患者さまの健康状態に合わせて、療養生活の支援や医療処置などを実施。加えて、在宅看護を行うご家族の不安や悩みを聞くなどして、精神的・身体的なサポートも行います。
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訪問看護師の主な仕事内容
訪問看護師の仕事内容は多岐にわたります。患者さまの健康状態の観察・管理や医師の指示を受けて行う医療処置に加え、ご家族の支援や在宅療養生活のサポートなど、幅広い支援をしています。
健康状態の観察と管理
訪問看護師の重要な仕事のひとつは、患者さまの健康状態の観察と管理です。バイタルチェックや問診などを通して、患者さまの健康状態を確認します。
患者さまに持病がある場合は、その状態の確認・管理なども実施。健康状態に合わせて、在宅療養を行ううえでの心がけなどを助言します。
ご家族の支援と相談
患者さまご本人だけでなく患者さまのご家族に対するサポートも、在宅看護における訪問看護師の大切な仕事です。
在宅療養で患者さまを支えるうえでわからないことや困っていること、不安に感じていることはないか、ご家族から相談を受けたりアドバイスをしたりします。
医師の指示にもとづく医療処置
訪問看護師は医師の指示のもと、たんの吸引や服薬管理、点滴など患者さまに必要な医療行為を提供します。医療処置の内容は、医師からの「訪問看護指示書」に従って実施。代表的な医療処置の例は下記のとおりです。
【訪問看護師が行う主な医療処置】
在宅療養生活のサポート
訪問看護師は、患者さまが自宅で日常生活を送るうえで必要な食事や入浴、排泄、呼吸管理など身の回りの行為に対してサポートを行います。褥瘡防止のための管理や体位変換、栄養指導などについてのアドバイスもその一部です。
医療機器の管理や指導
在宅で医療機器を使用している場合は、看護師による管理に加え、ご家族や患者さまご本人に対して医療機器の使い方や管理方法などを指導します。看護師など専門スタッフが不在のときでも、ご家族や患者さまだけで正しく医療機器を扱えるよう、適切な説明が必要です。
また、必要に応じて医療機器メーカーなどの専門スタッフと連携をとり、医療機器の管理や整備等も行います。
認知症や精神疾患のケア
訪問看護師は、認知症や精神疾患を抱える患者さまのご家族に対し、関わり方や対応の仕方などについて助言を行います。患者さまへの服薬確認・服薬指導なども実施。
また、認知症でひとり暮らしをされている方などのケースでは、ひとりでも身の回りのことがしやすいよう住環境を整える援助をします。
リハビリテーション
在宅看護において訪問看護師は、患者さまにリハビリも提供します。病気や障がいのために低下した身体機能や嚥下機能の回復、運動不足などの方に対しては身体機能の向上、寝たきりの方に対しては拘縮予防などが主な目的です。
リハビリテーション専門の職員が訪問して提供する場合と、看護師が訪問看護の一部としてリハビリを行う場合があります。
ターミナルケア
人生の最期のときを迎えられる患者さまの看取りをサポートします。患者さまご本人に対してはできるだけ苦痛が少なく、安楽に過ごせるようなケアを提供することが大切です。
また、ご家族に対しても、メンタル面のケアや支援を提供します。
在宅看護師の1日のスケジュール例
9:00 | 出勤・申し送り・訪問の準備 |
---|---|
9:30〜 | 午前の訪問(1〜2件) |
12:00 | 休憩 |
13:00〜 | 午後の訪問(2〜3件) |
17:00 | 訪問看護ステーションにて記録業務・申し送り |
18:00 | 終業 |
在宅看護を行う訪問看護師は、患者さまの訪問予定に合わせてスケジュールを組みます。そのため、訪問件数はその日によって異なっています。昼の休憩は訪問先の近くの飲食店で取るか、ステーションに戻って取る場合が多いです。
訪問看護師として働くメリット
訪問看護師は、患者さまのご自宅に伺ってケアを実施するため、ひとりの患者さまと時間をかけて向き合えます。患者さま一人ひとりとじっくり関わりたい人におすすめです。
一般的に訪問看護ステーションは、夜勤や土日勤務がない場合が多いため、生活とのバランスをとりながら柔軟に働けるでしょう。
また、訪問看護師はほとんどの場合ひとりで患者さまのご自宅に訪問します。看護師同士の人間関係のしがらみがなく、看護業務に集中できる環境です。
現在需要が高まっている在宅医療の領域で知識・技術も身につくため、今後のキャリアを広げるきっかけにもなります。
訪問看護師として働くデメリット
責任と判断力が求められる
訪問看護師は基本的に看護師ひとりでご自宅を訪問するため、自分ひとりで緊急時の判断が求められることもあります。困ったとき、他スタッフにすぐに相談しにくい場合もあり、大きな責任に精神的な負担がかかるケースもあるでしょう。
悪天候時等の移動・訪問が大変
悪天候時などは、患者さまのご自宅への訪問に影響が出やすく、スケジュール調整が難しい場合があるでしょう。
オンコール対応が必要な場合もある
オンコール対応がある職場の場合、休日や夜間の緊急対応に備えて自宅で待機し、対応するケースもあります。オンコール対応は事業所によって異なりますが、よくあるパターンは主に下記の3つです。
【よくあるオンコールのパターン】
上記パターン以外にも、オンコールの頻度や対応方法は事業所によってさまざま。
オンコール回数の相談ができる、もしくは出動件数が少ない事業所もあるため、詳しい内容を聞いてみるとよいでしょう。
①電話対応のみ
自宅で待機し、ご利用者さまやご家族から緊急で連絡があった場合に、電話で対応するパターンです。
緊急連絡時に備えて、常に気を使わなければならないことが多いものの、出動はありません。ご利用者さまのご自宅近くでの待機や移動がなく、身体的負担は比較的少ないです。
②電話対応+出動がある
自宅で待機し、ご利用者さまやご家族から緊急の連絡があった際に、電話対応と必要に応じてご利用者さまのご自宅に出動するパターンです。
身体的・体力的負担はありますが、病院の夜勤と違い、待機中にオンコール対応以外の看護業務はほとんどありません。オンコール手当とは別に「出動手当」も支給されることが多いため、手当の総額が高くなりやすいです。
③休日にオンコール当番がある
定休日がある事業所では、休日に看護師が不在のため、緊急時に備えて当番制で休日のオンコール対応が必要な場合があります。
休日対応をすると、通常のオンコール手当にプラスして「休日出勤手当」が出る場合も。きちんと「代休」をとれる事業所も比較的多くみられます。
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訪問看護師に求められる資格・経験
訪問看護師になるには、看護師資格が必要です。
基本的には、臨床経験が3年以上ある人の方が即戦力として期待されやすく、転職におけるアピール要素にもなります。とくに認定看護師や専門看護師の資格を取得していると、より高い看護知識や技術を習得しているとみなされるでしょう。
ただし、職場によっては、訪問看護が未経験の方も可として求人を出している場合もあります。
訪問看護師に向いている人の特徴
訪問看護師の仕事は、患者さまの在宅生活支援に興味がある人や、コミュニケーションが得意な人などにとくに向いています。在宅看護の現場で活躍する訪問看護師になるために、向いている人の特徴を押さえましょう。
患者さまの生活のサポートに興味がある
在宅看護では、医療行為を提供するだけでなく、患者さまの療養生活全般に対するサポートを行います。患者さまが抱える疾患を見るだけでは、患者さまとご家族にとってよりよい形の在宅生活は叶えられません。
疾患だけでなく患者さまの人間性に寄り添い、生活全体をサポートしたいと思える人、生活の質を向上させるための工夫を凝らせる人などに向いているといえるでしょう。
自発的に臨機応変な対応ができる
在宅看護は、病院とは異なり必要な医療機器や環境が十分に整備されていない状況の中で看護をしなければいけません。限られた環境の中で患者さまの生活を守りつつ、療養に適した環境に整備できるように工夫を凝らせる人は在宅看護に向いています。
また、患者さまの急変や緊急時などにも、自ら進んで冷静に判断し、適切な対応がとれる人にもおすすめです。
会話やコミュニケーションが好き
会話やコミュニケーションを積極的に行い、信頼関係構築を目指せる人に向いています。
患者さまのご自宅で看護を提供する在宅看護の特性から、患者さまやご家族と良好な信頼関係を築く必要があります。患者さまやご家族から信頼してもらえていないと、適切な看護ケアを提供できません。
また、訪問看護師はとくに「多職種連携」が求められる仕事です。「多職種連携」とは、さまざまな職種が専門性を互いに持ち寄り、ひとつの同じ目標に向かって連携する仕組みを指します。患者さまの在宅療養を支えるには、訪問看護師として関係機関や他職種との密接な連携が欠かせないため、コミュニケーションスキルが必要です。
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マナーや礼儀作法を守って行動できる
これは人としての基本事項ですが、訪問看護師の仕事はマナーと礼儀作法を心得て行動できる人に向いています。在宅看護では、看護師は患者さまのご自宅・生活スペースに伺う立場であるため、とくにマナーある行動が求められます。
訪問時の挨拶や患者さまへの接し方はもちろん、訪問するときの身だしなみなどにも注意が必要です。
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在宅療養を支える訪問看護師として転職を目指すために
現場で活躍できる訪問看護師になるためには、在宅看護の知識や技術を高めたり、アセスメントスキルを身につけたりすることが重要です。訪問看護師への転職を目指す人に向けて、準備しておくとよいことを詳しく紹介します。
在宅看護の知識・技術を高める
在宅看護において行う業務内容・医療行為の知識を深めておくと、実践で非常に役立ちます。吸たんや点滴、褥瘡処置、カテーテル管理、人工呼吸器の管理、急変対応などに関する知識を学んでおくとよいでしょう。
また、ご家族への対応方法や看取り、介護保険や医療保険の知識も必要です。知っておくと業務に役立てられるでしょう。
コミュニケーション能力・連携力を磨く
在宅看護を行ううえで、コミュニケーション能力は非常に大切です。よりよい看護ケアの提供のためには、患者さまやご家族とよい関係性を築くことが欠かせません。
基本的に普段の訪問看護はひとりで行いますが、患者さまの快適な療養生活を実現するためには、関係機関との協力や連携が必須です。独りよがりな看護にならず、医師や理学療法士など必要時には他職種との連携・協力を適切に行える能力が大切です。
アセスメントスキルを身につける
在宅看護では、看護師の不在時に患者さまに急変が起こる可能性もあります。訪問看護の限られた時間の中で患者さまの「小さな変化」に気づき、情報を集めてアセスメントしたうえで、適切な支援を提供する能力が欠かせません。
患者さまとご家族がより安心してご自宅で生活できるよう、希望する生活の実現を目指しつつ、看護師として必要なサポートを行える能力を磨きましょう。
求人情報の内容をよく確認する
訪問看護師の就業先は、訪問看護ステーションをはじめクリニックや病院などがあります。働く場所によって雇用条件や働き方が異なるため、求人情報の内容をくまなく確認しましょう。
たとえば、オンコールの有無や1日の訪問件数・交通手段、利用されている患者さまがどのような方であるかなどは、施設によって大きく異なります。詳細情報は求人サイトだけでなく、転職先に直接確認するのもよいでしょう。
訪問看護師の仕事に関するよくある質問
訪問看護師の仕事についてよく聞かれる質問と、その回答をまとめています。訪問看護にご興味のある方は参考にしてください。
Q.在宅看護における看護師の需要は?
訪問看護の利用者数は年々増えており、訪問看護を提供する事業所の数も増加に。医療政策によりすみやかな退院が促され、患者さまの意思を尊重して自宅で療養生活を送ることへの関心も高まっています。さらに、高齢化が進んでいる背景もあり、訪問看護師の需要は高いと考えられます。
Q.訪問看護師の主な就業先は?
訪問看護師の代表的な就業先は訪問看護ステーションです。訪問看護ステーションの事業所数は年々増えています。厚生労働省(※)によると、令和4年の医療保険の訪問看護を実施する訪問看護ステーションは13,866、介護保険の訪問看護を実施する訪問看護ステーションは12,498でした。
また、病院や診療所(クリニック)も訪問看護師の就業先のひとつです。しかし、介護保険による訪問看護を実施する病院や診療所は、年々減少傾向にあります。
▼参考資料はこちら
※参考:"訪問看護".厚生労働省.
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001123919.pdf,(参照2024-1-28)
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Q.訪問看護師の働き方の種類は?
訪問看護師の雇用形態として、大きくわけて常勤と非常勤があります。勤める事業所によって、オンコールがある場合とない場合も。
常勤の場合はオンコール対応ありのケースが多いです。しかし、オンコール対応のパターンは事業所によって異なり、必ずしも負担が大きいわけではありません。電話対応が中心であったり出動件数が少なかったり、常勤でもオンコール対応の回数を相談できるケースなどもあるので、詳しく聞いてみるとよいでしょう。
なお、非常勤の場合はオンコールなしが多く、常勤に比べ仕事の量や責任が少ない傾向に。業務量や仕事の責任の重さに比例して、給料にも差があります。
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在宅看護を担う訪問看護師は将来性の高い仕事
在宅看護は、患者さまがご自宅で療養生活を送るうえで必要なサポートを行うことです。訪問看護師は、患者さまやご家族がより快適にご自宅で生活できるよう、精神的・身体的なサポートを行う重要や立場といえます。
在宅看護の必要性は年々高まっており、将来的にも高い需要が予想されています。一人ひとりに寄り添う看護を提供することで、病院勤務とは違ったやりがいを得られるでしょう。
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