精神科訪問看護師の仕事内容は?働くメリット・心構え・向いている人の特徴
記事掲載日:2024/02/22
「精神科訪問看護」は、精神科領域に特化した仕事です。転職をお考えの方は、看護師が果たす役割や職場環境など、気になる点が多いはず。今回は、精神科訪問看護の主な仕事内容と看護師の1日のスケジュール例、メリットやデメリットをご紹介。精神科訪問看護に向いている人や役立つ資格も解説しますので、ぜひ参考にしてください。
- 精神科訪問看護とは?目的・需要について
- 精神科訪問看護師の主な仕事内容
- 精神科訪問看護師の1日のスケジュール例
- 精神科訪問看護師として働くメリット
- 精神科訪問看護師として働く際のデメリット・注意点
- 精神科訪問看護に向いている人・やりがいは?
- 精神科訪問看護師に転職する際に役立つ資格
- 精神科訪問看護は専門性が高く働きやすい仕事
精神科訪問看護とは?目的・需要について
精神科訪問看護とは、精神疾患を持つ患者さまなどを対象に、看護師がご自宅や入所施設などへ訪問してケアを提供するサービスです。精神疾患を持つ方以外に、心のケアや精神面の支援が必要な方にも看護ケアやサポートを行います。
精神科訪問看護では、患者さまやご家族、主治医や関係機関などと相談のうえ、患者さまの状況に合わせた必要なサポートを実施。
厚生労働省の調査結果(※)によると、精神科訪問看護を利用する方が抱える疾患は、統合失調症がもっとも大きな割合を占めています。主に、以下のような疾患を抱える方が利用の対象です。
精神科訪問看護を提供する対象者
※参考:厚生労働省「 地域における支援ニーズの高い者に対する精神科訪問看護の実態調査報告書 令和5(2023)年3月(学校法人 聖路加国際大学)」
精神科訪問看護の需要
厚生労働省の調査(※1)では、令和4年9月時点で4,319人の方が精神科訪問看護を利用しているとの結果(※2)が出ています。
これまで、精神疾患を抱える方のサポートや治療は、医療機関への通院・入院が多くの割合を占めていました。精神科訪問看護には、なじみある地域で看護ケアが受けられるメリットがあります。今後は、地域包括ケアシステムの構築が進むことも考えられ、ますます需要が高まると考えられるでしょう。
※1参考:厚生労働省「
地域における支援ニーズの高い者に対する精神科訪問看護の実態調査報告書 令和5(2023)年3月(学校法人 聖路加国際大学)
」
※2 調査について回答があった精神科医療機関と訪問看護ステーションの合計
精神科訪問看護が実施されるまでの流れ
一般的に、精神科訪問看護が行われる流れは上記の通りです。
まずは、訪問看護の利用を希望する患者さま・ご家族が、事業所や主治医等に相談し、利用を申請します。その後、訪問看護サービスの提供に必要な「精神科訪問看護指示書」を取得し、事業所と面談を実施。面談では、患者さまのケアに関する悩みや利用希望回数など、精神科訪問看護を行ううえで必要な情報共有をします。
手続きが完了したら、サービスの利用開始です。精神科訪問看護の事業所は、面談の中で得た情報をもとに事業所の担当者と看護ケアの内容を考え、患者さまにサービスを提供します。
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精神科訪問看護師の主な仕事内容
精神科訪問看護師の主な仕事内容は、服薬支援や症状の確認、日常生活のサポートなど患者さまに対するケアから、ご家族のサポート、関係機関との連携まで多岐にわたります。詳しい業務内容は下記の通りです。
服薬・バイタルサイン・症状の管理や確認
精神科訪問看護の主な業務内容は、服薬やバイタルサイン、疾患の症状についてなど、患者さまの健康状態に関わる観察業務です。
精神科の訪問看護は、規則的な服薬が苦手な方も利用するサービス。看護師として、内服のタイミングや、適切に内服できているかなどを管理・確認します。
また、患者さまの体温や血圧などバイタルサインをチェックし、体調の変化を確認。会話や生活の様子から、精神症状に変化はないか等も確認します。
不安や対人関係など思いの傾聴
精神科訪問看護では、病気の症状について患者さまからお話を聞きます。患者さまとの会話を通して、抱える不安や対人関係に関するお悩みについても傾聴。
状況に応じて看護師の視点から専門的なアドバイスを行う場合もあれば、患者さまが抱える思いに寄り添い、耳を傾けるだけのケースもあります。患者さまの中には、話を聞いてもらうだけで気持ちが軽くなるという方も多いです。
日常生活や自立に向けたサポート
精神面のケアだけと思われがちですが、精神科訪問看護では入浴や食事、排泄など、患者さまにとって困難な日常生活動作の支援も行います。
抱えている精神症状の影響により、身だしなみや身の回りのことを整えるのが苦手な患者さまもいます。コミュニケーションを取りながら、患者さまの症状に合わせて、自立のための必要な支援を実施します。
ご家族のサポート
精神科訪問看護においては、ご家族の支援も重要な業務です。ご家族が患者さまの療養生活を支えるうえで抱える悩みや不安の傾聴、日常生活のサポートに関する相談などを行います。
また、訪問看護で提供するケアについての説明も実施。患者さまとご家族の双方が納得したうえで訪問看護ケアを受けられるよう、丁寧な説明やサポートが求められます。
医療機関や関係機関との他職種連携
患者さまやご家族のサポートにあたり、関係各所との連携・情報共有も欠かせない業務。
精神科訪問看護は、チーム医療のひとつです。主治医や作業療法士、保健師等、患者さまのケアに関わるスタッフ・機関と連携を行いながら、サービスの方向性を決めて実施。
必要な場合は、患者さまご本人を含めて担当者が集まり、ケア会議をすることもあります。
精神科訪問看護師の1日のスケジュール例
9:00 | 出勤 訪問スケジュールの確認・ミーティング |
---|---|
9:30~ | 午前中の訪問2~3件 |
12:00 | 休憩 |
13:00~ | 午後の訪問2~4件 |
17:00 | 事業所に戻り、記録業務・翌日の訪問準備 |
18:00 | 退勤 |
精神科訪問看護師が1日に訪問する患者さまは、平均4~7件程度です。患者さま1人あたりの訪問看護ケアを提供する時間は、30分~40分程度といわれています。
記録は、勤務先によってはモバイル端末から出先で入力できることも。上記のスケジュールはひとつの例であり、事業所の規模や訪問スケジュールによってさまざまです。空き時間に記録業務をこなすこともあるでしょう。
精神科訪問看護師として働くメリット
精神科訪問看護師として働くことで、専門領域に携われたり、じっくりと患者さまに向き合えたり、さまざまなメリットがあります。中でも、働きやすさや専門性が活かせる点が魅力です。
専門的な領域で看護に携われる
精神科訪問看護では、専門的な精神科領域の看護ケアや薬物療法などに触れる機会が多いです。その特徴から、精神科領域の専門的な知識を身につけられ、精神疾患に特化した看護の技術を高められます。
看護師としての専門性を身につけたい方に大きなメリットでしょう。身につけた知識・技術・スキルが、患者さまやご家族へのよりよい支援につながり、働くモチベーションにもなります。
時間をかけて患者さまの支援ができる
精神科訪問看護は、外来や病棟勤務と比べて、患者さま一人ひとりのケアに使える時間が長いです。料理や洗濯など家事の練習や一緒に外を散策するなど、患者さまの個性を重視した柔軟なケアの提案もできます。
長い時間をかけて深い関係性を構築していくため、患者さまとじっくり向き合いながら看護ケアをしたい看護師に適している環境でしょう。
業務の身体的負担が少ない
精神科訪問看護の仕事は、比較的体力面での負担が少ない傾向にあります。急性期病棟などと比べて、生死に関わる患者さまの容態急変や、高度な医療行為が求められる機会が少ないためです。
また、オンコール対応のある事業所を除いて夜勤はほとんどなく、残業も少ない傾向にあります。看護師の仕事に体力的な不安がある場合も、比較的働きやすい職場環境といえるでしょう。
自分の声かけが患者さま・ご家族の支援に直結する
精神科訪問看護では、看護師の関わり方や声かけ、選ぶ言葉がケアの質に直結します。声かけを工夫することで、患者さまやご家族とよりよい関係の構築につながったり、症状を大きく左右したりすることも。難しさもありますが、やりがいが大きく魅力がある仕事です。
訪問を続ける中で、患者さまとの関わり方を常に工夫できる人などには嬉しいメリットでしょう。
ワークライフバランスを重視して働きやすい
精神科訪問看護の仕事は、プライベートと仕事のバランスを取り、両立して働きやすい職場です。
オンコール対応がある事業所を除いて、基本的に精神科訪問看護には夜勤がありません。残業も少ない場合が多く、身体的・精神的な負担を軽減できる可能性があります。週末のお休みも確保しやすい環境であることがほとんどです。
育児・介護をしている人や、生活と仕事のバランスを考えて働きたい人にとっては、メリットが大きい職場といえるでしょう。
精神科訪問看護師として働く際のデメリット・注意点
精神科訪問看護で働く際は、働く環境や業務の専門性の高さを踏まえた注意点もあります。精神科訪問看護師としていきいきと働くために、心構えとして知っておきましょう。
患者さまとの意思疎通が難しい
精神疾患を抱えている患者さまは、症状によってはうまくコミュニケーションが取れないこともあります。患者さまと信頼関係を築くのが難しく感じたり、意思疎通ができない自分を責めてしまったり、悩みを抱える可能性もあるでしょう。
また、患者さまのペースを考えすぎて、必要な看護ケアを提供できないケースもあります。精神科訪問看護師として働く場合は、1人で抱え込まず、事業所の担当者や主治医などと連携し、よりよいケアの方法を考えることが必要です。
危険や患者さまの急変に常に注意を払う必要がある
精神科訪問看護は、常にさまざまな事態を想定して、注意を払う必要がある仕事です。患者さまの状態が安定していると感じるときであっても、精神症状が急変する可能性があります。患者さまの精神状態によっては、暴言や危険な行動を受けたりするケースも。
少しでもリスクを減らすには、ケアを行う場所の安全管理を徹底することが有効です。また、多職種で連携し、緊急時の対応などについて共有しておくことも役に立つでしょう。
医療行為を実施する機会が少ない
精神科訪問看護では、病院の外来や病棟勤務などに比べて、医療行為を行う機会が少ないです。精神科訪問看護師の主な業務は、患者さまの話の傾聴や服薬管理、日常生活のサポートなど。実施する医療行為は、バイタルサインの測定がほとんどになるでしょう。
高度な医療行為に携わってどんどんスキルを習得したい看護師にとっては、仕事内容に物足りなさを感じてしまうケースもあります。
精神科訪問看護に向いている人・やりがいは?
精神科訪問看護は、向いている人にとっては非常に働きやすく、やりがいを感じられる仕事です。とくに向いている看護師の特徴を以下で紹介します。
精神科訪問看護師に向いている人の特徴
精神科訪問看護は、外来・病棟と比べて1人の患者さまと時間をかけて向き合えます。一人ひとりの個性を重視した看護に携わりたい人に向いているでしょう。
さらに、看護師の声かけひとつでケアの質が変わります。患者さまとの接し方や提供するケアの内容などを常に考え、工夫を凝らせる人にもおすすめの仕事です。
なお、精神科看護の特性から、患者さまの精神面を扱ううえで看護師本人が精神的・身体的な負担を感じてしまうケースもあります。看護師自身に精神的な安定感があり、精神疾患に関する知識や技術の学びを続けられる人にも向いているでしょう。
精神科訪問看護のやりがい・向いている人
精神科訪問看護のやりがいや仕事の特性をもとに、向いている人の特徴をご紹介します。
精神科訪問看護はこんな方におすすめ①
精神科訪問看護はこんな方におすすめ②
精神科訪問看護はこんな方におすすめ③
精神科訪問看護師に転職する際に役立つ資格
精神科訪問看護師として働くために、看護師資格以外で必須の資格はありません。精神科での勤務経験も必須ではありませんが、未経験の場合は、「精神科訪問看護基本療養算定要件研修」など一定の研修の受講が必要です。
また、精神科訪問看護師として働く際は、上記以外で持っていると役立つ資格もあります。ステップアップのため、資格取得を検討してみましょう。
精神科認定看護師/精神科専門看護師
精神科認定看護師は、精神科看護における知識や優れた看護ケアの実践能力を持つことを認定する資格です。精神科看護の相談や指導、さらなる知識の発展に貢献する役割を担います。看護師として5年以上の実務経験がある人で、規定の教育課程を修了し、認定審査に合格すると得られる資格です。
また、精神科専門看護師は、広い視野で患者さまやご家族が直面する問題を捉え、看護ケアの実践や質の向上に取り組む役割を担います。5年以上の看護師の実務経験を持ち、看護系大学院で修士課程を取得後、審査に合格することで得られる資格です。
どちらも精神看護の分野で優れた知識と技術を持っていることを認めるものです。
認知症ケア指導管理士
認知症ケア指導管理士は、認知症の患者さまやそのご家族を支えるための、専門的な知識を持つことを認める資格です。初級・上級にわかれており、初級は受験資格を問わず誰でも受験できます。
精神科訪問看護を利用する患者さまの中には、認知症を持つ方もいらっしゃいます。取得することで、認知症ケアの知識や専門技術などを身につけられるでしょう。
ケアマネジャー
ケアマネジャーは、介護保険サービスの利用を希望される方に対して、ケアプラン(サービス計画書)を作成する介護保険の専門家。都道府県ごとに管理されている公的資格です。
精神科訪問看護でも、少数ですが介護保険を利用して訪問看護サービスを利用される方がいらっしゃいます。資格を持っていることで業務に役立てられるでしょう。
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精神科訪問看護は専門性が高く働きやすい仕事
精神科訪問看護は、精神疾患を持つ患者さまやそのご家族に対して、ご自宅などに訪問してケアを提供する仕事です。患者さまにとって、家に訪問してじっくり時間をかけてケアしてくれる看護師は、大変貴重な存在でしょう。
また、精神科訪問看護は夜勤や残業がほとんどなく、プライベートと両立しやすい仕事です。看護師にとってメリットが多いため、精神看護が好きな方、専門領域で働きたい方にはとくに向いているでしょう。
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