訪問診療で働く看護師を解説!仕事内容やメリット・デメリットも
記事掲載日:2023/11/16
医師や看護師が自宅や施設に出向き医療行為を行う訪問診療。大まかなイメージはついても、実際に訪問診療で看護師がどのように仕事をしているのか、詳しく知らないという人もいるのではないでしょうか。本記事では、訪問診療の看護師の仕事内容や気になる給与、メリット・デメリットを解説します。転職する際のポイントもご紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
- 【基礎知識】訪問診療とは?
- 訪問診療の看護師の仕事
- 訪問診療の看護師の給与
- 看護師が訪問診療で働くメリット/やりがい
- 看護師が訪問診療で働くデメリット/大変なこと
- 訪問診療の看護師に役立つ資格
- 訪問診療に転職する際のポイント
- 訪問診療の看護師に関するよくある質問
- 訪問診療の看護師は他にはない魅力がたくさん!
【基礎知識】訪問診療とは?
訪問診療とは、何らかの理由で通院が困難な状態にある患者さまのご自宅や、入所中の施設を訪問し診療することです。医師が定期的に患者さまを訪問し、計画的に治療や看護、健康管理などを実施。定期的に診療することで、患者さまの健康維持、症状悪化の予防を目指します。
近年では高齢化が進み、住み慣れた自宅での療養を望む患者さまが増加。そのため、訪問診療のニーズは今後さらに増えていくと予想されています。
患者さまの特徴
訪問診療を利用する患者さまには、病気や障がいのため通院することが難しく、自宅などで療養生活をしている方が多くいらっしゃいます。その中には、終末期の療養をされている方も。訪問診療を利用することで、通院によるご本人やご家族の負担を減らせます。
訪問診療と往診の違い
訪問診療と往診の違いは、定期的な訪問か、緊急時のみの訪問かという点です。
訪問診療は、病気や障がいなどにより、通院が困難な患者さまのもとへ定期的に訪問し診療します。基本的には、在宅療養や施設の患者さまのために、計画を立てて治療を行うものです。
一方、往診は緊急時などの必要な場合に都度訪問し診療するもの。突発的な症状の変化がある、かつ通院は困難だが、救急車を呼ぶほどでもない場合などに利用されます。
訪問診療の看護師の仕事
訪問診療での看護師の役目は医師の診療の補助がメインです。ただ、もちろんそれだけではなく、患者さまやご家族の安心のためにさまざまなサポートをしています。以下にその役割を紹介します。
訪問診療の看護師の役割
訪問診療の際の看護師の主な業務内容は、医師の診療の補助です。血圧や体温などバイタルサインの測定、採血などを行います。
また、その他看護師に期待されている役割は、患者さまやご家族の心理的なサポートです。安心して療養をしていけるよう悩みや不安を聞き、一緒に解決方法を考えていきます。医師との間のつなぎ役としても大切な存在です。
訪問診療の看護師の主な業務内容
訪問診療の看護師は、医師の指示で医療行為をすることや、患者さまやご家族に説明やアドバイスを行うこともあります。具体的な業務内容について、以下で詳しく見ていきましょう。
医療行為・診療の補助
訪問診療での主な業務内容は、患者さまの症状の観察と、診療の補助などです。血圧や酸素飽和濃度などバイタルサインの測定なども行います。また、医師の指示のもと、採血や点滴、注射、尿道カテーテルや胃瘻の交換などの医療行為も実施。その他、床ずれなどの創傷がある場合の処置も業務内容の一つです。診療時間に限りがあるため、手際よく処置を行う必要があります。
診療の準備・スケジュール管理
訪問診療のスケジュール管理や調整などは、看護師が担当することが多いです。訪問が予定されていた時間より遅れる場合などは、訪問先に連絡しスケジュール調整をします。
診療・療養に必要な物品の準備も看護師の担当です。いざという時に現場で物品が足りないということがないように、事前に準備しておきましょう。また、看護師が送迎の車の運転をする場合もあります。
患者さまやご家族への対応
療養生活を行う患者さまや、ご家族の心理的なサポートをすることも看護師の役割です。患者さまサイドから治療に対する思いや希望をしっかりと聞き取ります。その情報を医師へ共有し、今後の治療方針に役立てていきます。
その他、健康管理のためのアドバイスなども看護師の役目です。
他職種との連携
患者さまが利用する他のサービスの担当者と連携を取ることも、看護師の大切な業務。連携する主な職種は上記ですが、患者さまの状況に応じて連携先はさまざまです。
たとえば、デイサービスを利用されている方は、その担当職員と連絡を取り合います。そのほか市役所や県庁、保健センターなどの公的機関とは、自立支援医療制度や難病申請関連で担当者と連絡を取ることもあります。
訪問診療の看護師の一日の流れ
訪問診療の看護師の一日の流れを紹介します。施設や環境によって時間帯は異なるため、一例として参考にしてみてください。
9:00~ | 出勤・朝礼・カルテチェック |
9:30~ | 午前の訪問 |
12:00~ | 休憩・昼食 |
13:00~ | 午後の訪問 |
17:00~ | 事業所に戻り記録や物品の準備 |
18:00 | 退勤 |
出勤後、朝礼を終えたら当日訪問予定の患者さまのカルテを確認。そして、それぞれ必要な荷物を準備し、午前の訪問に回ります。訪問診療の件数は日によって増減があるため、時間帯はあくまでも一例です。訪問が終わり次第事業所に戻り、カルテに情報を記録、翌日の物品の準備をします。
訪問診療の看護師の給与
訪問診療の看護師の給料は月給25万円~40万円超までと、事業所によってさまざまです。オンコール対応や土日の勤務の有無など、事業所によって条件があることが、給与の差の原因のようです。具体的な給与の例は、実際の求人を確認してみてください。
看護師が訪問診療で働くメリット/やりがい
訪問診療は医師とペアで医療行為を行う珍しい形態。そのため、看護師にとっても訪問診療ならではのメリットややりがいは多くあります。下記はその中の代表的なものです。
他の職場にはない貴重な経験ができるでしょう。
医師と同行するため、スキルアップにもつながる
訪問診療は医師に同行するため、直接指導を受ける機会が多く、医療知識を深めたりスキルアップをしたりしやすい環境だと言えるでしょう。調べても分からないことを医師に質問できる機会も多いため、病態に関する理解もより深めることができます。
スキルアップのためには、恵まれた環境と言えるでしょう。
患者さまやご家族から心理的にも頼られる
自宅などで療養している患者さまやそのご家族にとって、定期的に家まで来訪する医師や看護師の存在は非常にありがたく、頼りになる存在です。時には療養の悩みや不安に思っていることを相談されることもあります。
訪問を楽しみにしてくださる患者さまもいらっしゃり、親身に寄り添うことで感謝の言葉をいただく機会も。患者さまの支えになれることに、大きなやりがいを感じられることでしょう。
看護師として幅広い業務に携われる
訪問診療を必要としている方の疾患の幅は広く、がんや難病、認知症、老衰、精神疾患などさまざま。また、患者さまの年齢層も高齢者からお子さままで幅広いことが特徴です。いろいろな患者さまと向き合い、日々の仕事をこなしていく中で、幅広い疾患に対応できる知識を身に着けられるでしょう。
看護師が訪問診療で働くデメリット/大変なこと
訪問診療特有のメリットややりがいがある一方で、下記のようなデメリットや大変な面もあります。
以下で確認していきましょう。
事業所、エリアによっては多忙になる場合がある
事業所によりますが、訪問エリアが広い場合や交通事情、一日の訪問診療の件数によっては多忙になる場合があります。とくに悪天候になると交通が乱れ、予定通りに訪問するのが困難になることも。
ある程度の見通しを立てるため、訪問エリアの広さや一日の訪問件数などは、事前に情報収集しておくと安心です。
オンコール(緊急往診)がある
事業所によりますが、オンコールでの緊急往診に対応している所もあります。オンコールでは患者さまからの電話対応に加えて、必要に応じて緊急往診が発生する可能性も。そのため、「お酒を飲まない」「当番の日は予定を入れない」など、工夫して過ごす必要があります。
オンコール対応が難しい人は、面接を受ける前にオンコール対応の有無を確認し、オンコールのない施設を選びましょう。
看護師が運転手を兼任する場合がある
訪問診療の際、看護師が運転手の役割を担うこともあります。しかし、場所によってはドライバーがいる事業所もあるため、必ずしも運転免許が必要ということはありません。運転が苦手な人や運転免許を持っていない人でも勤務が可能な場合もあるため、応募の際に問い合わせてみましょう。
訪問診療の看護師に役立つ資格
訪問診療では看護師資格があれば働くことはできます。
加えて、認定看護師、専門看護師、特定看護師資格があれば、高い専門性を活かし診療補助を行うことが出来るでしょう。
とくに在宅ケア、緩和ケア・皮膚・排泄ケア、がん看護、老人看護などの分野で認定・専門看護師の資格があると役立つ場面もあります。また、運転免許は訪問診療の送迎に役立つため、持っていると事業所を選ぶ際の選択肢が広がるでしょう。
訪問診療に転職する際のポイント
訪問診療は事業所によって運営の形態が異なるため、雇用条件や仕事の内容もさまざまです。そのため、転職の際は下記のような条件をしっかりと確認することが重要です。
オンコール(緊急往診)や雇用条件の詳細を確認する
オンコールの頻度や対応する内容などは、実際に勤務する際の負担感を大きく左右するため、しっかりと確認しておく必要があります。また、基本給や手当、勤務時間、休日の数についても確認しましょう。
病院やクリニックの場合は、訪問診療の担当だけでなく、外来の看護師も兼任する場合もあります。雇用条件の詳細をしっかりと確認することが大切です。
一日の訪問件数を確認する
一日の訪問件数は事業所や状況によってばらつきがありますが、多く場合4~10件程度と言われています。訪問先が施設の場合はまとめて診察するため、20件ほどになることもあるようです。
訪問先やその日のスケジュールによっても大きく異なるため、面談では訪問件数の目安を必ず確認しておきましょう。
どのような患者さまがいらっしゃるのかを確認する
事業所によって、訪問診療を受け入れている患者さまの疾患の特徴は異なります。年齢、疾患の幅を問わず広く受け入れている事業所もあれば、似たような疾患をお持ちの患者さまを受け入れている事業所も。事前に、受け入れている患者さまの症状や特徴について、具体的に確認しておくのがよいでしょう。
また、必要になる医療行為や対応なども具体的に確認し、これまでの経験を踏まえ対応ができる内容かどうか検討することも大切です。
転職サイトを活用する
訪問診療の看護師の求人は一般的な病院の求人と比べると少ないため、情報を豊富に持つ転職サイトを上手に活用して就職活動をするのがおすすめです。
おすすめは、ナースステップ。ナースステップは、訪問診療の求人も豊富に取り扱う看護師のための転職支援サービスです。医療業界専任のコンサルタントが転職活動を無料でサポート。分からないことが多い初めての転職活動でも安心です。
訪問診療の看護師に関するよくある質問
訪問診療で働く看護師についてよくある質問を下記にまとめました。転職を考えている方は参考にしてみてください。
Q. 訪問診療と訪問看護の違いは?
訪問診療は、診療所などから定期的に医師が患者さまを訪問して診療を行い、計画的に治療を進めるものです。看護師は医師の補助として同行する形です。一方、訪問看護は医師の指示のもと、訪問看護ステーションから看護師のみが患者さまを訪問し必要なケアを行います。
Q. 訪問診療の看護師になるために必要なことは?
正看護師または准看護師の資格は必須ですが、看護師としての実務経験は必須ではありません。しかし、経験があればさまざまなケースを予測した対応ができるため、実務経験がある方が望ましいです。
また、訪問診療の際に役立つ分野の専門知識があると、より質の高いケアを提供できます。
Q. 看護師が訪問診療で働く場合の職場は?
訪問診療を業務の一部として行っている病院やクリニックでは、訪問診療の他に外来業務の看護師を兼務している場合が多いです。
また、24時間の往診体制を取っている在宅療養支援診療所や、さらに厳しい診療体制基準をクリアしている機能強化型在宅療養支援診療所などの就職先もあります。
Q. 訪問診療は一日に何件?
訪問診療の看護師は他にはない魅力がたくさん!
訪問診療で働く看護師は医師の診療の補助だけでなく、患者さまやご家族の精神的なサポートなど、欠かすことのできない大切な役割を果たす必要があります。個別性と質の高い看護を提供することで、満足度も高くなり、看護師としてのやりがいも大きなものとなることでしょう。
訪問診療における看護師の求人は、事業所によって条件もさまざまであることから、まずはしっかりと情報を集めることから始めましょう。少しでも多くの情報を集めるために、看護師専門の転職サイトを利用することがおすすめです。
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