地域包括ケア病棟とは?他施設との違いや看護師の役割をわかりやすく解説
記事掲載日:2024/05/15
患者さまの在宅療養生活に向けた支援を行う「地域包括ケア病棟」。高齢社会に対するために比較的新しくできた病棟のため、名前が聞き慣れない方も多いでしょう。今回は、地域包括ケア病棟で働く看護師が担う役割や仕事内容、病棟の特徴、やりがいなどを紹介します。地域包括ケア病棟への転職をお考えの方は参考にしてみてください。
- 地域包括ケア病棟とは
- 地域包括ケア病棟と他病棟の違い
- 地域包括ケア病棟における看護師の役割・仕事内容
- 【看護師向け】地域包括ケア病棟で働くメリットとデメリット
- 【看護師向け】地域包括ケア病棟の仕事のやりがい
- 地域包括ケア病棟への転職を目指すために
- 地域包括ケア病棟は患者さまの在宅復帰に携われる職場
地域包括ケア病棟とは
安心して在宅復帰できるように看護やリハビリで支援する病棟
地域包括ケア病棟とは、急性期疾患の治療後すぐに退院することに不安がある患者さまなどを対象に、在宅復帰のための看護や支援、リハビリ等を行う病棟です。
通常は治療を終えると退院し、自宅や施設での生活に戻ります。しかし、すべての人がこのルートを辿れるわけではありません。地域包括ケア病棟は、そのような方の支援を行うために確立された病棟です。
地域包括ケア病棟の施設基準
看護職員の配置 | 13対1以上(看護師7割以上) |
---|---|
リハビリ専門職の配置 | 1名以上(常勤の理学療法士・作業療法士・言語聴覚士) |
リハビリテーション実施 | 1日平均2単位以上 |
重症患者の割合 | 重症度、医療・看護必要度Ⅰ:10%以上 重症度、医療・看護必要度Ⅱ:8%以上 |
在宅復帰率 | 入院料・管理料1、2の場合:72.5%以上 入院料・管理料3、4の場合:70%以上 |
入院期間 | 60日まで |
参考:厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要(全体概要版)」P.44-83
施設基準とは、医療機関が特定の診療点数を算定するために満たす必要がある、設備や機能、一定の人員などの基準のことです。あらかじめ地方厚生局に届け出ておく必要があります。
地域包括ケア病棟においては、患者さま13人に対して看護職員を1人以上配置することが定められています。他にも、入院期間が60日までと決められており、リハビリ専門職の配置やリハビリ実施単位数、在宅復帰率にも基準があることが特徴です。
地域包括ケア病棟へ入院対象の患者さま
地域包括ケア病棟の入院対象となる患者さまは、主に急性期の治療後すぐに自宅での生活が難しい方です。経過観察や回復、在宅生活に戻るためのリハビリや支援を必要としているという特徴があります。
また、介護者の都合などで一時的に在宅療養ができなくなった場合も、地域包括ケア病棟に入院する対象になります。対象とされる疾患は、とくに決まりはありません。
地域包括ケア病棟における看護師の役割・仕事内容はこちら地域包括ケア病棟が確立された背景
地域包括ケア病棟は、平成26年4月より導入された比較的新しい病棟です。高齢者の割合が増加傾向にある昨今、現状ある医療・介護サービスだけでは対応しきれないことが懸念されました。
高齢化社会における幅広い医療ニーズに対応するためには、医療と介護が連携し、患者さまやご家族を支援できる体制が必要です。また、国が推進する「地域包括ケアシステム」を支えるためにも、高齢者の在宅生活をサポートする病床が必要と考えられます。このような背景から、地域包括ケア病棟が新設されました。
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地域包括ケア病棟と他病棟の違い
地域包括ケア病棟の特徴を、他の病棟と比較してみてみましょう。各病棟の特徴とそれぞれの違いは下記表の通りです。
主な役割 | 看護職員の配置 | 対象の疾患 | 入院期間 | |
---|---|---|---|---|
地域包括ケア病棟 |
退院支援 在宅復帰支援 |
13対1以上 | 問わない | 60日まで |
一般病棟 (急性期一般病棟) |
急性期治療 | 7対1以上 | 問わない | 16日以内(平均在院日数) |
回復期リハビリ テーション病棟 |
退院支援 社会復帰支援 在宅復帰支援 |
13対1以上 または15対1以上 |
あり (脳血管障害や骨折など) |
疾患により60日~180日 |
療養病棟 | 療養 | 20対1以上 | 問わない | 制限なし |
訪問看護 | 在宅療養支援 | 2.5人以上 | 問わない | なし |
地域包括ケア病棟と一般病棟の違い
一般病棟は、病気になった直後から安定した状態になるまでの期間にあたる「急性期」の患者さまが入院する病棟です。病棟の主な役割は疾患の治療で、生命の危機に直面している患者さまや急変の可能性がある患者さまなどが入院します。一般病棟における看護師の主な仕事は、患者さまの全身管理や診療の補助などです。
一方、地域包括ケア病棟は、一般病棟を退院される段階の患者さまが入院する病棟であるため、重症度は一般病棟より低い特徴があります。地域包括ケア病棟は、一般病棟よりも患者さまとじっくり関われるでしょう。
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地域包括ケア病棟と回復期リハビリテーション病棟の違い
回復期リハビリテーション病棟は、「リハビリ」に重点を置いた病棟です。疾患によって入院期間の上限は異なっていますが、最長180日まで入院できます。看護師のほか、理学療法士や言語聴覚士などとチーム医療を実施し、患者さまのリハビリを中心に取り組む点が特徴です。
地域包括ケア病棟でも、1日平均2単位(40分)リハビリテーションを実施します。しかし、回復期リハビリテーション病棟の方が、実施するリハビリ単位数が1日最大9単位(3時間)(※)と多く実施します。
(※)運動器リハは1日最大6単位まで
参考:厚生労働省「令和6年度診療報酬改定の概要(全体概要版)」P.44-83
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地域包括ケア病棟と療養病棟の違い
療養病棟は、積極的な治療の必要がなく、状態が安定した患者さまの対応を行う病棟です。主に慢性期の患者さまが対象であり、医療処置の実施は少ない傾向にあります。看護師の主な役割は、患者さまの痛みやつらさを軽減し、その人らしく生活できるようなサポートを行うことです。
対して地域包括ケア病棟は、退院支援や在宅生活に戻るためのサポートが中心。入院期間に制限がある中でリハビリをし、在宅へ戻られる患者さまの姿を見られることで、やりがいを得られるでしょう。
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地域包括ケア病棟と訪問看護の違い
訪問看護は地域包括ケア病棟とは異なり、在宅での看護に移行した後の患者さまに看護ケアを提供します。患者さまが生活している環境で、じっくり寄り添いながら患者さまの個別性を重視した看護ケアに携われる点にやりがいがあるでしょう。
一方、地域包括ケア病棟では、患者さまの入院中のケアに加え、退院支援・退院後の在宅生活に向けた支援までを行います。患者さまと二人三脚で退院という目標を目指すため、やりがいを得られるでしょう。
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地域包括ケア病棟における看護師の役割・仕事内容
地域包括ケア病棟における看護師の役割と仕事内容を紹介します。看護師には、患者さまの在宅療養生活を見越した地域包括ケア病棟ならではの役割があるため、詳しくみていきましょう。
地域包括ケア病棟で看護師が担う役割
地域包括ケア病棟では、患者さまが不安なく安心して在宅復帰し、在宅での生活を迎えられるように支援を行います。多職種や地域の専門職、ご家族と連携して、入退院の調整なども仕事のひとつです。
看護師は、患者さまの入院中に一番近くでサポートを行う存在であるため、患者さまの疾患の程度や状態に合わせた適切なケアが求められるでしょう。
また、地域包括ケア病棟では、患者さまの在宅復帰を支えるためにさまざまな職種と連携を図り、業務を行う必要があります。とくに看護師は、病棟内や地域における多職種間の調整役を担う場合が多いです。
地域包括ケア病棟における看護師の具体的な仕事
入院受け入れ対応
入院受け入れ時には、患者さまやご家族へオリエンテーションを実施し、患者さまの情報を聞き取って共有します。聞き取る内容は、なぜ入院に至ったのか、患者さまの疾患や状態の程度、ADL、退院後にどのような在宅生活を求めているかなどです。カルテに漏れがないよう記載していきます。
退院の支援・調整
患者さまが不安なく在宅生活を迎えられるように、退院までの支援と日程の調整を行います。患者さまの個性を重視し、入院中の目標や退院日までにどのような状態になっていたいかなどを話し合って決定します。退院後の生活をイメージしながら目標を設定し支援していきます。時には外泊の提案をすることもあるでしょう。
患者さまへの生活援助・医療処置
入院中の患者さまに対し、食事や排泄、入浴など必要な身の回りの生活援助も大切な仕事です。褥瘡ケアや点滴、与薬、経管栄養、吸痰処置など、患者さま一人ひとりに合わせて、必要な医療処置を実施します。
患者さまが安心して過ごせるよう環境を整えることや、モチベーションを高めるような声掛けでメンタル面のサポートも大切です。
多職種との連携・調整
患者さまの状態について、医師やリハビリ専門職、介護分野のケアマネジャーなどと情報を共有し連携します。退院後、スムーズに在宅生活に移行できるような支援が重要です。ご家族やケアマネジャー、退院後に利用する介護サービス担当者、かかりつけ医など必要に応じて多職種と密に連携を図り、調整を行うことが求められます。
ご家族への支援
患者さまのご家族が抱える不安や悩みを払拭するため、看護師はご家族に対する相談や支援を行います。とくに、在宅生活に移行した後の療養に関する相談などにも対応します。
ご家族の不安に寄り添い、共感的・支持的に接するのが大切です。退院後のケア方法を指導したり、介護疲れ防止のために介護サービスの利用を提案したりすることもあるでしょう。
【看護師の1日】地域包括ケア病棟勤務のスケジュール例
8:45 | 出勤・情報収集 |
---|---|
9:00 | 調べて記載(以下同様) 申し送り |
9:15〜12:00 |
バイタルサイン測定・状態観察・保清 リハビリ付き添い 与薬・食事介助 |
12:00 | 休憩・昼食 |
13:00 | カンファレンス |
14:00〜16:00 | バイタルサイン測定・状態観察 ご家族やケアマネジャー等と連絡 退院指導 記録 |
16:00 | 申し送り |
17:45 | 退勤 |
上記は、日勤の看護師のスケジュール例です。勤務先のスケジュールや担当患者さまの予定などによって1日の予定は異なっており、夜勤が発生する場合も。通常の看護業務に加え、リハビリや指導、カンファレンス、多職種との連絡などの業務をこなします。
【看護師向け】地域包括ケア病棟で働くメリットとデメリット
メリット | デメリット |
---|---|
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地域包括ケア病棟で働くメリット
地域包括ケア病棟は、よりよい状態で在宅生活を迎えられるように支援を行う病棟であるため、患者さま一人ひとりに寄り添うサポートが実践できます。在宅支援や在宅での生活を見据えたケアが中心であり、この分野の幅広いスキルが身につくでしょう。
また、多職種との連携が日常的にあることで、看護職以外の知識習得や、調整力・連携スキルを身につけることができます。夜勤はあるものの、一般病棟などに比べて緊急対応が少ないため、仕事と生活のバランスをとって働きやすい傾向にあるでしょう。
地域包括ケア病棟で働くデメリット
地域包括ケア病棟は多職種連携が必須の職場であり、連絡業務に負担を感じる場合もあるでしょう。また、疾患を問わない病棟であるため、さまざまな領域の知識・技術が求められます。急性期病棟などと比べて、最新の高度な医療技術や看護ケアについて学ぶ機会は少ないです。
しかし、地域包括ケア病棟は、在宅支援に関する幅広い知識が身につく貴重な職場であるため、患者さまに寄り添う看護ケアを学べる点は魅力といえます。
【看護師向け】地域包括ケア病棟の仕事のやりがい
地域包括ケア病棟では、単に疾患の治療を行うだけでなく、患者さまの在宅生活や在宅療養までを考えながら支援を行います。患者さまの持つ力を引き出しながら生活面を考え、寄り添うケアに従事できる点が魅力のひとつです。
患者さまやご家族が求める在宅生活を実現するために何が必要か、考えることはとても難しいものです。多職種連携を通してそれを実現できたとき、とくにやりがいを感じやすいでしょう。
【地域包括ケア病棟で働くのはこんな看護師におすすめ】
地域包括ケア病棟への転職を目指すために
地域包括ケア病棟へ転職する場合に看護師が求められる能力と、おすすめのアピールポイントを紹介します。転職活動の際には、面接対策などの参考にしてみてください。
地域包括ケア病棟の看護師に求められる能力
地域包括ケア病棟の看護師には、患者さまやご家族がどのような支援を必要としているか、退院後どのような生活を望んでいるか、ヒアリングによって適切に把握することが求められます。患者さまやご家族の希望を叶えるために、看護師や専門職にできることは何かを考え、実践する力が必要です。
地域包括ケア病棟が対応する疾患は幅広いため、疾患の治療だけでなく在宅支援・介護分野の知識も欠かせません。また、多職種間の連携が多いため、コミュニケーション能力も求められます。
地域包括ケア病棟に転職する際のアピールポイント
地域包括ケア病棟で働く際に求められることを理解し、自分の経験を踏まえて上記のような点をアピールしましょう。求人によっては、一定期間の臨床経験があることを条件に定めているケースもあります。
自身の臨床経験をもとに、患者さまやご家族に接する際に意識したことなどを具体的にアピールすると、即戦力としてよい印象を与えられるでしょう。
ナースステップの地域包括の看護師求人はこちら地域包括ケア病棟は患者さまの在宅復帰に携われる職場
地域包括ケア病棟は、在宅で過ごしたい患者さまを支える病棟です。リハビリをする患者さまやご家族に寄り添い、多職種と連携しながら退院に向けてスケジュールを調整していくことは、一般病棟とは異なる大変さもあるかもしれません。しかし、目標を達成して自宅へ退院される患者さまを送り出すことには、大きなやりがいを感じられるでしょう。
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