急性期病棟(病院)の看護師のリアル-仕事・役割メリット・デメリットまで解説
記事掲載日:2023/08/23
急性期病棟の看護師は、生命の危機に直面している患者さまや周手術期の患者さまの治療に関わります。忙しくて大変そうなイメージが強いですが、学べることはとても多く、キャリアアップを目指す看護師にはおすすめです。この記事では、急性期看護師のリアルをご紹介します。
- そもそも急性期とは?
- 急性期病棟(病院)の患者さまの特徴
- 急性期病棟(病院)の看護師の仕事・役割
- 急性期病棟(病院)の看護師として働くメリット
- 急性期病棟(病院)の看護師として働くデメリット
- 急性期病棟(病院)の看護に向いている人
- 急性期病棟(病院)の種類
- 急性期病棟(病院)の看護師に関するよくある質問
- キャリアアップしたい看護師には急性期病棟がおすすめ!
そもそも急性期とは?
急性期とは、病気のなりはじめや、全身状態の変化が激しく不安定な状態から、治療によってある程度安定した状態になるまでの期間を指します。一般的には、発症から14日以内が急性期の目安です。急性期の患者さまが入院する病院では、24時間体制で医師や看護師が集中的な治療や観察を行います。
急性期病棟(病院)の患者さまの特徴
・周手術期の患者さま
・重症度の高い患者さま
・急変する可能性の高い患者さま など
急性期病棟に入院している患者さまの特徴は診療科によるものの、発症直後や生命の危機に瀕している状態の方、周手術期の方、急変する可能性の高い方などです。脳卒中や心臓血管の疾患、循環器系など、さまざまな診療科の患者さまがいらっしゃいます。
急性期病棟では、集中的に治療するため、患者さまの状態が安定したら別の病棟に移動します。日々、患者さまの入れ替わりがあるのが特徴です。
急性期病棟(病院)の看護師の仕事・役割
急性期病棟の看護師は、患者さまの治療をサポートします。生命維持に関わる重症な患者さまも対象にするため、小さな変化にいち早く気づき、早期治療につなげることが重要です。
急性期の看護師の主な仕事内容
・人工呼吸器の管理、ドレーン、点滴の観察や管理
・診療の補助
・周手術期の管理
・身体を清潔にするためのケア(排泄の管理含む)
・患者さまやご家族の精神的フォロー など
急性期病棟での看護師の業務は、「療養上の世話」よりも「診療の補助」の側面が強くなります。
急性期病棟に入院しているのは、生命維持に関わる重症な患者さまや手術直後で状態が不安定な患者さまです。人工呼吸器やドレーン、点滴、経管栄養など、さまざまな医療機器を扱うことも多く、周手術期や重症の患者さまの全身管理も行うため、看護の緊張感も高いでしょう。
急性期病棟の看護師には、患者さまの観察をこまめに行い、異常の早期発見、合併症の予防をすることが最も求められます。もちろん、慢性期病院と同じように、生活援助や退院支援も同時並行で進めます。
急性期病棟の看護師に求められるもの
急性期病棟の看護師には、スピード感のある対応が求められます。患者さまは、病態が不安定で、変化が多いためです。小さな変化の見逃しが生命に関わることもあるため、より緊張感を持って業務にあたる必要があります。
また、急性期病棟では、患者さま一人当たりに投与される薬剤の種類が多いため、薬剤の作用や副作用についてもしっかりと理解しておくことが重要です。
さらに、ご家族のサポートも看護師の大切な役割です。急性期は患者さま本人だけでなくご家族の負担も大きいため、精神面でのフォローや連携も求められます。
【急性期看護師(※HCU・CCU混合配属2年)のリアルな声】
急性期の看護師は他の看護師や医師、他職種との連携はもちろん、患者さまのご家族との連携を忘れないようにすることがとても重要です。
例えば、それまで普通に歩けていた患者さまが心筋梗塞になって急に歩けなくなったり、最悪の場合急に亡くなってしまったりということも少なくありません。ご家族がお見舞いに来られない場合や急に体調が変わってしまった場合など、最終的な病状と、ご家族が抱いている最終的な患者さまの病状のイメージに相違があると、トラブルになる可能性があります。
今の病状を伝え、なぜこの新たな治療が必要なのかご家族に説明をしたり、ご家族の意向を汲んだ医療が受けられるようにしたりと、ご家族と医師の双方で乖離が起きないよう橋渡し役に徹するよう意識しましょう。
患者さまのご家族をあとに残して先に行ってしまわないために、必要があったら積極的にICの依頼をしていくなどの判断が必要です
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急性期病棟の看護師で活躍するために必要な資格はある?
急性期病棟(病院)の看護師として働くメリット
・観察・判断・対応する力が身につく
・患者さまの回復する様子が分かりやすくやりがいを感じられる
・部署異動や転職活動でアピールできる
患者さまの容態が不安定な急性期病棟では、スピーディーな対応力と柔軟性を身につけることができます。また、診療科にとらわれず幅広い疾患の患者さまが入院しているため、さまざまな治療についての知識や技術が習得できます。
これらの力は、急性期病棟に関わらず全ての科の看護師に必要とされる能力です。そのため、急性期で経験を積めばどこでも求められる看護師になれると言えます。実際に、急性期病棟の経験がある看護師は、部署異動や転職で優遇されるケースもあるようです。
患者さまが回復する様子が目に見えてわかるのも、急性期病棟のメリットです。寝たきりだった患者さまや、意識がなかった患者さまが、さまざまな治療を通して他の病棟に移れるまで回復する過程を見られるのは、急性期病棟の看護師だからこそ。回復が目に見えることで、やりがいを感じやすいでしょう。
急性期病棟(病院)の看護師として働くデメリット
・患者さまの生死に関わる場面に多く立ち会う
・インシデントの発生リスクが高い
・仕事の緊張感が高い・緊張感を感じる時間が長い
急性期病棟は、生命維持のために一刻を争うこともある現場です。そのため、長時間緊張を強いられたりすることも多く、精神的な負担が大きくなってしまうことも。また、患者さまの入れ替わりが激しいため忙しくなりやすく、慢性期病棟よりは患者さま一人ひとりとゆっくり向き合う時間は少なくなる傾向です。
また、生死に関わる場面に立ち会うことも多くあります。
患者さまの重症度が高く治療の割合が多いため、インシデントの発生リスクが高まることもデメリットと言えます。
また、急変や緊急入院があると、残業が長時間になることも珍しくありません。子育てや介護との両立は、大きな負担になってしまう場合もあります。
急性期病棟(病院)の看護に向いている人
・向上心がある人
・意欲がある人
・テキパキ動ける人(頭の回転が速い人)
・感情の切り替えが上手い人
・コミュニケーションが取れる人
スキルアップを目指したい看護師には、急性期病棟がおすすめです。ただし、急性期病棟では全てにおいてスピード感が求められるため、効率よくテキパキ動ける人でないと大変に感じます。
また、急性期病棟に入院してくるのは回復していく患者さまばかりではありません。重症患者さまの急変などもあり、常に緊張感も高いため、ストレスコントロールができる人、感情の切り替えが上手い人が向いていると言えます。
また、慢性期に比べて医師や他職種などとの連携がさらに必要となるのが急性期病棟の看護師です。コミュニケーションを取ることに問題がないことは必須の条件ともいえるでしょう。
向上心があり、看護師としてスキルアップをしたい人には、急性期病棟での勤務は非常に大きな経験となるでしょう。自分の性格やビジョンと照らし合わせて考えてみてください。
急性期病棟でリーダーになった場合は、的確な判断と的確な指示を出す必要があります。
例えば、受け持ちの看護師がどうしたらいいか分からなそうにしていたら「とりあえずご家族に繋がるまで電話していて」「心マ始めてください」「救急カート持ってきて」「ここ3人でいいから他の人は別の仕事をしていて」など瞬時に判断し、的確に指示を出せることが大切です。
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急性期病棟(病院)の種類
それぞれの医療機関は、医療機能に応じて「高度急性期機能」「急性期機能」「回復期機能」「慢性期機能」の4つに分類されます。急性期に該当する病院は、「高度急性期機能」と「急性期機能」です。
高度急性期機能
急性期の患者さまに対し、状態の早期安定化に向けて、診療密度が高い医療を提供する機能のことです。急性期の中でも、重症度が高い患者さまを対象とします。
救急病棟やICU、NICUなどがある病院をイメージしてください。基本的には、診療科を問わずに治療を行います。
救命救急病棟、集中治療室、ハイケアユニット、新生児集中治療室、新生児治療回復室、
小児集中治療室、総合周産期集中治療室など
急性期機能
急性期の患者さまに対し、状態の早期安定化に向けて、医療を提供する機能のことです。高度急性期よりは診療の密度が高くなく、診療科目ごとに病棟や病床が分かれるのが一般的です。
病院によっては、急性期病棟と一般病棟や地域包括ケア病棟が混合になっていることもあります。急性期機能では、容態が安定してきた患者さまの治療やケアも担います。
引用/参考: 厚生労働省「病床機能報告の定量的な基準も含めた基準の検討について」
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急性期病棟(病院)の看護師に関するよくある質問
ここでは、急性期病棟の看護師についてよくある質問に回答します。
Q. 急性期病棟と救急病棟との違いは?
救急病棟では、救急隊によって搬送された患者さまに対して医療を提供します。早急な治療が必要な、事故やケガ、脳卒中や心臓の疾患などに対応します。
一方、急性期病棟では、病気やケガの発症から14日以内の患者さまが対象です。救急車で運ばれて救急病棟で治療を行い、初期的な治療が完了したら急性期病棟に移ることもよくあります。
Q. 急性期と回復期・慢性期の違いは?
急性期は病気のなりはじめや、全身状態の変化が激しく不安定な時期です。容態が安定すると急性期から回復期に移り、リハビリなどで回復を目指します。慢性期になると、社会生活への復帰に向けて体力回復を図ります。
Q. 急性期病棟の看護師で活躍するために必要な資格はある?
急性期病棟で働くのに特別な資格は必要ありません。より高度かつ専門的な看護の提供のために、クリティカルケア認定看護師、急性・重症患者看護専門看護師などを取る人もいます。
それ以外にも、ICLS、ACLS、BLSなどのコースを受けておくと役立つでしょう。
Q. 急性期病棟での看護を経験する適切な時期は?
急性期病棟は、柔軟性と体力がある若いうちに経験するのがおすすめです。急性期病棟は、体力的にも精神的にもハードな現場。年数の浅い看護師が配置されやすい傾向もあるため、長く経験してからよりは、20代〜30代のうちに経験するのが良いでしょう。
Q. 回復期や慢性期の看護師が急性期病棟で勤務するときに知っておくべきことは?
患者さまの入れ替わりが激しい、緊急入院が多い、処置が多いなどは代表的な急性期病棟の特徴です。まずはその点を覚悟しておく必要があります。
ただ、看護の基礎は同じです。診療科に関わらず対応できるよう、基本的な部分をしっかりと押さえておく必要があります。ただし、それ以上に急性期病棟で新しく学ぶことも多いでしょう。
また、急性期病棟は緊張感が高く、精神的にも負担の大きい職場です。日々の仕事や患者さまとしっかり向き合うためにも、自分のストレスも適切にケアしていく必要があります。
慢性期や回復期から急性期への異動は簡単ではありません。このような点をしっかりと押さえ業務に臨みましょう。
キャリアアップしたい看護師には急性期病棟がおすすめ!
急性期の病棟は、体力面でも精神面でもハードであることは間違いありません。しかし、急性期病棟では、スピーディーな対応力や柔軟性、さまざまな治療についての知識や技術が習得できます。また、患者さまが大きく回復する過程を見られるのは、急性期病棟の看護師だからこその嬉しさ。回復が目に見えることで、やりがいを感じることが出来るでしょう。
看護師としての高い総合力が身につくため、将来的に部署異動や転職で優遇されるケースもあります。キャリアアップしたい看護師は、急性期病棟で経験を積むのがおすすめです。
ナースステップは一人ひとりの悩みに寄り添って、看護師の転職をサポートしてくれます。急性期病棟で働きたい、仕事を探したい、とお考えの方は、ぜひご相談ください。