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終末期看護とは?看護師が知っておきたい定義・役割・携わるうえで大切なこと

記事掲載日:2024/01/09

終末期看護とは?看護師が知っておきたい定義・役割・携わるうえで大切なこと

終末期看護は、人生の終末期にある患者さまが抱えるさまざまな苦痛をケアする仕事です。適切に終末期看護にあたるためには、終末期の特徴や看護師の役割を正しく理解する必要があります。今回は、終末期看護の仕事の特徴や、看護師の役割、仕事をするうえで大切なこと、看護計画の例などをご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

終末期看護とは?

終末期看護(ターミナルケア)とは、終末期の患者さまが抱える苦痛を和らげて、
その人らしい余生を過ごせるようにサポートする医療・看護・介護ケア

終末期看護とは、終末期にある患者さまが抱える、身体的・精神的苦痛などの全人的苦痛を和らげるために行う医療・看護・介護ケアです。「ターミナルケア」とも呼ばれます。

終末期看護は、患者さまの生活の質(QOL)を上げ、残された時間を穏やかに過ごすことを目指して実施する支援です。下記の「終末期の定義」にあげた3つの条件を満たす患者さまに対して行います。

終末期の定義

  • 複数の医師が客観的な情報を基に、治療により病気の回復が期待できないと判断すること
  • 患者が意識や判断力を失った場合を除き、患者・家族・医師・看護師等の関係者が納得すること
  • 患者・家族・医師・看護師等の関係者が死を予測し対応を考えること
  • 出典:公益社団法人 全日本病院協会「終末期医療に関するガイドライン~よりよい終末期を迎えるために~

    公益社団法人 全日本病院協会では、終末期の状態を上記のように定義づけています。

    ただし、終末期の定義は、専門家や団体によって異なるケースも。「終末期」と判断されるまでの期間も疾患の種類などにより異なるため、単純に期間だけで定めることは適切でないとしています。

    たとえば、救命救急などの現場では、疾患を発症してから数日程度で終末期と判断されるケースがあります。一方で、がんなどの難病や脳卒中の後遺症等の場合、数カ月〜数年程度で判断に至る場合も。

    終末期看護と緩和ケア・ホスピスケアの違い

    終末期看護 すべての終末期を迎えた方が平穏に過ごすための看護
    緩和ケア 終末期に限らず、患者さまやご家族が抱える苦痛を和らげるために行うケア
    ホスピスケア 延命や治癒を目的とした治療は行わず、終末期の患者さまに対し苦痛を和らげるために行うケア

    緩和ケア・ホスピスケアは主にがんの患者さまを対象に行うケアであり、大きな違いはありません。

    終末期看護は、緩和ケア・ホスピスケアとは重なる部分も多いですが、老衰や認知症なども含めてすべての疾患を対象としています。

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    終末期を迎えた患者さまの特徴

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    アメリカの精神科医であるキューブラー・ロスは、人は5つの段階に沿って死を受け入れると提唱しました。終末期を迎えた患者さまとそのご家族が辿る、心理状態の段階5つは下記の通りです。

    プロセス 特徴
    否認 事実を目の前に出されても、「そんなはずはない」と感情が否定する段階
    怒り 「なぜ自分だけが」と、目の前の事実に対して怒りを抱く段階
    取引 延命を神や仏に祈るなどして、取引を願う段階
    抑うつ 逃げられない事実を前に気力を失いながら、徐々に受け入れ始める段階
    受容 事実を受け入れて諦観していく段階

    このプロセスは必ずしも上から順番に進むわけではなく、人によっては行ったり来たりすることもあります。知っておくことで、患者さまやそのご家族の心理状態が急激に変化した場合にも落ち着いて対応できるでしょう。

    終末期を迎えた患者さまが抱える苦痛

    終末期を迎えた患者さまは、4つの苦痛「全人的苦痛(トータルペイン)」を抱えるといわれています。

    特徴
    身体的苦痛 痛みや倦怠感、息苦しさ、日常生活動作への支障など肉体的な苦痛
    精神的苦痛 不安、いらだち、恐れ、孤独感、怒り、うつ状態
    社会的苦痛 仕事の問題、経済的な問題、家族の問題、人間関係、遺産相続の問題
    スピリチュアルペイン 人生の意味への問い、苦しみの意味、罪の意識、死の恐怖、価値観の変化、死生観の悩み

    身体的苦痛・精神的苦痛・社会的苦痛・スピリチュアルペインの4つの苦痛は、それぞれ密接に関わり合っており、いずれかの苦痛があることで他の苦痛を誘発することがあるといわれています。

    たとえば、身体的な痛みが増すと不安やいらだち、怒りなどが生じる場合があるでしょう。また、家族間や仕事に問題を抱えている場合には、肉体的に感じる痛みがいっそう強く感じられることも。

    4つの苦痛の関連性を考えながら関わることで、終末期の患者さまが抱える苦しみの理解につながります。

    終末期看護で大切なこと・看護師が担う役割

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    終末期の看護において看護師は、死に直面した患者さまやご家族の支えとなる大切な役割を担います。看護師の主な仕事内容について以下で詳しく紹介していきます。

    意思決定の支援

    終末期を支える看護師には、患者さまがどのように最期を迎えることを望んでいるか、患者さまの意思で選んで決められるようにサポートする役割があります。患者さま本人の意思を尊重して決定されることが望ましいでしょう。

    患者さま本人が意思表示できない場合、ご家族の意思を伺うケースも。看護師には、患者さまやご家族に寄り添い傾聴したり、医療チーム内で連携し情報共有をしたりする役割が求められます。

    身体的苦痛に対する看護ケア

    終末期にある患者さまの日常生活は、疼痛や倦怠感などにより大きく妨げられている状態です。終末期を支援する看護師は、さまざまな身体的苦痛を和らげるケアが求められます。

    看護師は医師の指示にもとづき、鎮痛剤やオピオイドなどの薬物療法を実施。他にも、日常生活動作の援助や食事面でのケア、できる限り安楽に過ごせるようマッサージや温罨法などを行うなど、さまざまな工夫をしてケアにあたります。

    【症状別】身体的苦痛の主な観察項目

    症状 観察項目の詳細
    疼痛 バイタルサイン・痛みの部位・持続時間・強さ・性状(ズキズキ・ピリピリなど)・睡眠状態・食欲・日常生活への支障・痛みに対する言動・表情 など
    食欲不振 食事摂取量・体重・BMI・血液検査データ・排便状態・食事内容・食欲に対する言動 など
    倦怠感 バイタルサイン・意識レベル・睡眠状態・主訴・ADLの変化・身体や精神症状・興味や意欲の減退・表情 など
    呼吸困難 主訴・呼吸数・呼吸の仕方・聴診所見・SpO2・チアノーゼの有無・呼吸困難度の評価(VAS、NRS、mBSなど)・血液検査データ・胸部X線所見・胸部CT所見 など

    終末期は、主に上記の観察項目に沿って身体的苦痛の度合いを評価していきます。それぞれの症状が患者さまに与える影響を注意深く観察し、より快適に過ごせるようなケアを提案しましょう。

    精神的苦痛に対する看護ケア

    終末期の看護では、死を目前にした患者さまが抱える不安やせん妄、抑うつなどを緩和するケアが必要です。看護師は、患者さまの感情に寄り添い、より穏やかな気持ちで終末期を過ごせるようサポートする役割を担います。

    リラックスして過ごせるよう生活環境を整えたり、患者さまやご家族とコミュニケーションをとったりするなど、積極的に関わっていきましょう。

    【症状別】精神的苦痛の主な観察項目

    具体例 観察項目の詳細
    不安 表情・言動・睡眠状態・身体症状 など
    せん妄 バイタルサイン・意識状態・日内変動・見当識障害の有無・主訴・幻覚の有無・使用している薬剤・全身状態 など
    抑うつ 表情・言動・活動状況・食事摂取量・睡眠状態
    不眠 睡眠時間・睡眠状態・日中の活動状況・主訴・身体症状 など

    精神状態は身体症状にも大きく左右されます。精神症状だけにとらわれず、身体的な状態や使用している薬剤についても注意深く観察しましょう。

    社会的苦痛に対する看護ケア

    終末期の患者さまは、疾患の治療費など経済的な問題や、患者さまご自身が亡くなってから残されるご家族の心配といった社会的な苦痛も抱えています。不安や悩みを和らげるため、看護師には共感的な姿勢で患者さまの悩みを傾聴し、問題解決できるようなサポートが求められます。

    場合によっては看護師だけでなく、ソーシャルワーカーなど他職種につなぐ連携が必要です。

    スピリチュアル的苦痛に対する看護ケア

    終末期の患者さまは人生の終わりに臨み、これまでの信念や価値観を振り返ったときにスピリチュアルな悩みを持つことがあります。医療関係者に表出することは信頼関係ができていないと難しいですが、話すことで楽になったり、気持ちに整理をつけられたりすることもあるでしょう。

    精神的苦痛の看護ケアと同様、看護師には患者さまの声を傾聴し、気持ちに寄り添うサポートが求められます。患者さまにとって、共感を持って悩みを受け入れられることが特に大切です。

    ご家族のケア・サポート

    終末期の患者さまを支えるご家族は、大きなストレスや不安を抱えています。ご家族の悩みに寄り添って精神的なケアを行うことも、終末期に関わる看護師の大切な役割です。

    患者さまの気持ちに寄り添うのと同様に、ご家族の意思や気持ちを汲み取ることも求められます。また、これから予測される患者さまの変化などを知らせることで、ご家族が心の準備をし、死を受容できるようにサポートするとよいでしょう。

    【具体例あり】終末期看護の看護計画の立て方

  • 1.看護問題
  • 2.看護目標
  • 3.観察項目
  • 4.ケア計画
  • 5.教育計画
  • 看護計画とは、患者さまが抱える問題を解決するために、分析した患者さまの情報などに基づいて看護の方向性や目標を定めた計画です。計画は上記のような5つの項目に沿って作成するのが一般的。

    看護計画は患者さまとご家族に説明し、同意を得てから実施するものです。評価日を事前に設定し、到達度を確認したり、新たな問題が発生した際には随時計画を修正・追加したりします。

    具体的な看護計画の例

    【看護問題】
    疼痛コントロールが不十分である

    【看護目標】
    疼痛コントロールによりQOLが向上する

    【観察項目】
    バイタルサイン・痛みの部位・持続時間・強さ・性状(ズキズキ・ピリピリなど)・睡眠状態・食欲・日常生活への支障・痛みに対する言動・病状の理解度・表情・鎮痛薬の効果と持続時間・レスキュー・ドーズの使用回数・鎮痛薬の副作用の有無

    【ケア計画】
    医師の指示に従い、鎮痛薬や医療用麻薬を投与する
    疼痛に合わせてADLの援助と療養環境の調整を行う
    ポジショニングで安楽な体位を取れるようにする
    気分転換できるよう支援する
    鎮痛薬の使用に対する気持ちを傾聴する
    支持的な立ち位置・態度で接する
    患者さまの希望に応じて温罨法などの非薬物療法も取り入れる

    【教育計画】
    痛みがあるときは看護師に伝えるよう説明する
    鎮痛薬や医療用麻薬に関して誤解がないよう正しい知識を伝える
    レスキュー・ドーズの使用タイミングについて看護師と相談し、痛みが予想される場合は事前に使用するなどの対処方法を伝える
    心配や困りごとがあるときは看護師に相談するよう伝える

    上記の看護計画はあくまでも一例です。患者さまの個別性に応じて、必要な内容があれば記載するようにしましょう。

    終末期看護に携わりたい場合は?

    終末期看護に携われる現場は、主に「病院」「介護施設」「在宅」の3つです。看取りというと病院や介護施設のイメージが強いですが、近年ではとくに在宅での終末期看護の需要が高まっています。在宅での終末期看護の需要は、今後さらに高まることが想定されます。

    終末期看護に携わりたい場合は、在宅看護や在宅ホスピス系の仕事に就くのも選択肢の1つでしょう。

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    終末期看護に関するQ&A

    終末期看護について、よく聞かれる質問をまとめています。終末期看護を行う施設への転職をお考えの方は、ぜひ参考にしてください。

    Q.終末期看護を行う場所は?

    A. 主に病院や介護施設、患者さまのご自宅などです。

    病院では、急変の際すぐに医療を受けられる点がメリットです。介護施設でも、介護スタッフのサポートが受けられる特徴があります。

    しかし、近年では自宅で終末期を過ごす方が増えています。病院や介護施設に比べると費用負担が軽いことや、住み慣れた自宅でリラックスして終末期を過ごせる点がメリットです。ご自宅で終末期を過ごす場合、訪問看護師などがケアを行います。

    Q.終末期看護が抱える問題は?

    A. 意思決定の難しさや、医療費の問題があります。

    終末期において、特に患者さまとご家族、双方の意向を尊重して意思決定することが難しいと言われています。

    患者さま本人が意思決定できない状態の場合、ご家族や関係機関との話し合いが続く可能性も。ご家族と日頃から終末期について話し合っておく機会や、エンディングノートなどがあれば意思決定しやすくなるでしょう。

    また、終末期には医療費の経済的な負担が生じやすい問題もあります。

    Q.終末期看護に携わる際の心構えは?

    A. 患者さまやご家族の気持ちに「共感」し、寄り添うことが大切です。

    終末期看護では、患者さまが元気になって退院していくわけではないため、やりがいを感じられないと思ってしまうこともあるかもしれません。

    しかし、患者さまやご家族が納得して安らかに生涯を終えるためには、看護師として共感の姿勢で寄り添うことが特に大切です。共感の姿勢で終末期看護に携わることで、患者さまやご家族が抱える苦痛を和らげ、QOLを向上させることにつながるでしょう。

    Q.終末期看護に携わる際に役立つ資格は?

    A. 緩和ケア認定看護師やがん看護専門看護師、終末期ケア専門士などがあります。

    終末期看護に関連する専門的な資格を取得することで、さらに深い知識を得て日々のケアに活かせるでしょう。

    「緩和ケア認定看護師」や「がん看護専門看護師」は、日本看護協会が認めている資格です。この他、一般社団法人日本終末期ケア協会の「終末期ケア専門士」、日本在宅ホスピス協会が認定する「THP(トータルヘルスプランナー)」などがあります。

    終末期看護は人生の最期を支える大切な仕事

    終末期看護は、誰もが迎える人生の最期を安らかに過ごせるようにサポートする大切な仕事です。どのように死を迎えたいかという希望は人それぞれであり、もっとも個別性を尊重した看護を実践できる場でもあるでしょう。患者さま本人とご家族が納得して最期を迎えられたとき、大きなやりがいを感じられる職場です。ご紹介した内容を参考に終末期看護について理解を深め、業務に役立てましょう。

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