在宅ホスピス(在宅緩和ケア)とは?患者さまの最後への関わり方
記事掲載日:2022/03/15
誰もがいつか迎える死。
最期の瞬間をどのように過ごし、どのような状態で終えたいかは人それぞれです。看護師として働いていると、病院ではなく自宅での最期を望む患者さまと関わることもあるのではないでしょうか。近年、患者さまが自分らしく死を迎えるための「在宅ホスピス(在宅緩和ケア)」に注目が集まっています。
今回の記事では、在宅ホスピスとは何か、その注意点、看護師が果たすべき役割などについて詳しく見ていきましょう。
在宅ホスピス(在宅緩和ケア)とは?
まずは、最期の時間を自分らしく過ごすためのホスピス(緩和ケア)や在宅ホスピス(在宅緩和ケア)について確認していきましょう。
ホスピスとは?
WHO によると、ホスピス は「生命を脅かす疾患に関わる問題に直面している患者さまとその家族に対して、痛みや身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアルな問題を早期に見出し、的確に評価して対処することで、苦痛を予防して和らげ、QOL(クオリティー・オブ・ライフ/生活の質)を改善するための方法」だと定義されています。
具体的には、終末期にある患者さまが穏やかにその人らしく過ごせるよう、痛みや不快感などの症状を取り除くケアや治療を指します。薬の投与による痛みの除去に加えて、精神的な苦痛を緩和するためのサポートも行われます。
また、日本では、ホスピスの実施を目的に作られた施設を「ホスピス」と呼ぶこともあります。
在宅ホスピスとは?
在宅ホスピスとは、患者さまが最もリラックスできる場所である自宅で療養をしながらホスピスを行うことです。医療施設や介護施設、福祉施設と連携し、患者さまの生活に合ったホスピスを進めます。
病院で行うホスピスと比較して、患者さまが過ごしやすい環境で実施できる点が特徴です。近年、共同住宅や介護施設などでホスピスを行う事例も増えてきています。
在宅ホスピスで重要となるのが、多職種がチームで行う多様なケアです。医師や看護師、薬剤師、栄養士などが症状緩和のために医療面のケアに取り組む一方で、訪問介護職員や保健師、地域住民などが生活面の支援を進め、患者さまの生活の質を向上させます。
また、患者さまの死後のご家族に対するグリーフケア(死などの喪失体験による深い悲しみを負った人への支援)を含めてケアを行うことも多いです。
在宅ホスピスのメリットと注意点
在宅ホスピスでは、自分らしく暮らしやすい環境で、患者さまの希望に寄り添ったケアを実現することが可能です。一般的な診療であれば、病院と同程度のケアを受けられます。
患者さまの意思を尊重した看護に取り組みたいと考えている看護師であれば、とくにやりがいを感じられるでしょう。
在宅ホスピスの注意点
在宅ホスピスで注意しなければならない点として、以下の2点があげられます。
- 精密機器などを使用した検査や治療ができない
- 急変時の対応が遅れる可能性がある
在宅医療が推進され、持ち運びしやすい医療機器も増えていますが、やはり病院の設備と比べると劣ります。そのため、一般的な診療では対応できない疾患などの場合は注意が必要です。
さらに、急変時に迅速な対応ができない点も考慮しなければなりません。救急車を使ったとしても到着までには時間がかかってしまいます。患者のもとに駆けつけた際、看護師には正確かつスピーディな処置が求められるでしょう。
また、病院や介護施設でのホスピスと比べると、自宅でのケアはご家族の負担が大きくなります。看護師として在宅ホスピスに携わるのであれば、ご家族への配慮を忘れないようにしましょう。
看護師が果たすべき役割
在宅ホスピスでは、医療従事者だけでなく福祉施設や介護施設の職員、地域の方々などとの連携が重要になります。そのため、看護として果たすべき役割をあらかじめ知っておきましょう。
痛みや不快感をコントロールするための医療行為を行う
在宅ホスピスでも、医師の指示に沿った医療行為を担うのは看護師です。主にモルヒネ を使用した痛みのコントロールや、褥瘡・傷の治療、点滴、持続皮下注射などで患者さまのケアをします。
医師の指示によって治療行為を行うのは病院と同じですが、患者さまの自宅で用意できる設備と持ち運びできる医療機器のみでのケアを行います。
また、ご家族に協力をお願いする場合もあるため、わかりやすく説明できるよう正確な知識をもち、臨機応変に対応する必要があるでしょう。
患者さまとご家族への理解を深める
在宅ホスピスでは、患者さまと共に暮らしているご家族の協力が不可欠です。患者さまのご自身のことはもちろん、住居環境やご家族への理解を深めたうえでサポートする必要があります。
今後の治療方針や人生の過ごし方については、患者さまの意向に加えてご家族の思いも汲んだうえで看護師として ふさわしい対応をしましょう。職種を超えたチーム連携を促す
患者さまが求める環境を整えるためには、職種の違いを超えてケアを実施するチームで連携していく必要があります。そのため、看護師としての役割を果たすだけでなく、他職種と積極的にコミュニケーションをとり、相互理解を深められると良いでしょう。
また、「チーム医療」での連携は、在宅ホスピスでのケアにも応用できるでしょう。
在宅ホスピスに向いている看護師
在宅ホスピスでの患者さまへのケアと、病院やクリニックで行うケアでは目的が違います。ここでは、在宅ホスピスに従事する看護師に向いている方の特徴について解説します。
一人ひとりに寄り添ったケアをしたい方
在宅医療や在宅ホスピスでは、患者さま一人ひとりの生活スタイルや気持ちに寄り添ったケアが求められます。多くの患者さまを担当するよりも、目の前の患者さまの人生により深く関わりたい方には在宅ホスピスが適していると言えます。
人間性が豊かで思いやりがある方
患者さまに寄り添ったケアをするためには、まず患者さまに信頼される必要があります。とくにホスピスでは患者さまの気持ちを汲んで行動する場面が多くなります。看護師のなかでも思いやりがある方に向いているでしょう。
患者さまの気持ちを最優先したい方
在宅ホスピスでは看護師として患者さまの痛みを取り除くための治療行為を行います。しかし、あくまでも本人の意向を尊重したケアが中心です。患者さまの気持ちを優先して決断したいと考える看護師にはぴったりの働き方でしょう。
在宅ホスピスを支える訪問看護師
在宅ホスピスに従事する看護師は、訪問看護の経験がある看護師が多いと言われています。
訪問看護では病状の改善を目的として治療をするケースが主ですが、患者さまに深く向き合い、気持ちを汲み取りながらケアを進める点は同じです。
在宅ホスピスに興味をもった方は訪問看護も視野に入れて職場を探してみると良いでしょう。
まとめ
今回は、在宅ホスピスについて詳しく解説しました。
団塊の世代が75歳以上となる2025年に向けて、地域包括ケアシステムの構築が進み、在宅医療が充実するのにあわせて在宅ホスピスもさらに広がっていくでしょう。
病気の治療だけにとらわれず患者さまの意向を尊重し、寄り添うケアができる在宅ホスピスはやりがいのある仕事です。病院での患者さまのケアとは違った魅力があるでしょう。患者さまの意思を尊重したケアを理想としている方、多様な経験を積んでスキルアップをしたい方は、ぜひ転職先の候補の一つとして検討してみてはいかがでしょうか。
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