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精神科の訪問看護ステーションの業務や役割とは?これからの需要も解説

記事掲載日:2022/12/28

精神科の訪問看護ステーションの業務や役割とは?これからの需要も解説

稼働している訪問看護ステーションの全国総数は、一般社団法人全国訪問看護事業協会によると、2020年の4月時点では11,931件だったのに対し、2021年4月には13,003件へと増加しています。

在宅医療の需要の高まりから、さらなる増加が見込まれるでしょう。

その中で、精神科特化の訪問看護ステーションは多く存在しているものの、認知度が低いのが実情です。

この記事では、精神科特化の訪問看護ステーションの業務や役割、どのような方に支援をしているかに加え、これからの需要についても転職を考えている看護師に向け解説していきます。

▼参考資料はコチラ
一般社団法人全国訪問看護事業協会「令和3年度 訪問看護ステーション数 調査結果」

精神科特化の訪問看護ステーションとは

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まずは精神科特化の訪問看護ステーションとはどのようなものなのか、対象者となる利用者と業務の内容をみていきましょう。

対象となる利用者

そもそも訪問看護の対象者は「公益財団法人 日本訪問看護財団」によると、疾病や何らかの障害を抱えながら在宅で過ごしている方で、医師によって訪問看護が必要と認めた方を指します。年齢や疾患に制限はありません。

医師の書く訪問看護指示書をもとに看護師が訪問に行きますが、精神科特化の訪問看護ステーションの場合も、精神科病院や心療内科・精神科クリニックの医師などから指示を受け訪問します。

たとえば訪問看護の対象の利用者さまは、下記のような疾患や障害の方です。

  • ●統合失調症
  • ●うつ病や双極性障害などの気分障害
  • ●神経症性障害
  • ●身体表現性障害

2021年3月に一般社団法人 日本精神科看護協会が発表した「精神科訪問看護に係る実態及び精神障害にも対応した地域包括ケアシステムにおける役割に関する調査研究」の報告書から、もっとも多いのは統合失調症と言われています。

他にもADHDやASDなどの発達障害、知的障害、境界性パーソナリティー障害などのさまざまな疾患の方を対象に看護を行います。

▼関連記事はコチラ
地域包括ケアシステムで看護師に求められる役割とは

▼参考資料はコチラ
公益財団法人 日本訪問看護財団「訪問看護とは(医療・福祉関係者向け)」
厚生労働省「精神科訪問看護に係る実態及び精神障害にも対応した地域包括ケアシステムにおける役割に関する調査研究」

業務の内容

次に精神科特化の訪問看護では、どのような業務を行っているのか紹介します。業務の内容は多岐にわたり、利用者さまの状況によっても行う業務は異なりますが、たとえば下記のような業務があります。

  • ●コミュニケーションによる不安の傾聴
  • ●社会資源の活用
  • ●内服・通院の支援
  • ●食事や睡眠など日常生活
  • ●バイタルサイン測定や服薬の管理

精神疾患の方への訪問看護では、医療処置は少なく、コミュニケーションがメインになることが多いです。

コミュニケーションをとる中で、利用者さまの抱える不安や悩みを傾聴したり、必要な方には内服に関する説明をしたり、食事や睡眠などの日常生活に関する助言を行ったりと、利用者さまごとに必要な業務を行っていくという流れです。

また、社会資源の活用というのは、主に精神障害者保健福祉手帳の更新や自立支援医療制度の手続きなどの精神疾患を抱えた方が地域で生活を送ったり、通院や内服などの治療を続けたりする中での重要な制度の手続きを指します。

看護師の詳しい役割は、後ほど解説していきます。

精神科特化の訪問看護ステーションの必要性

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2017年2月に厚生労働省が発表した「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会報告書」によって、地域で過ごす精神疾患の方の支援の必要性が示されました。

この報告書から今後、精神疾患を持つ方が地域で安心して自分らしく生活できるように、目指すべきであるとされています。精神科訪問看護の必要性はさらに高まるといえるでしょう。

▼参考資料はコチラ
厚生労働省「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会報告書」

精神科特化の訪問看護を利用する人の割合

精神科特化の訪問看護ステーションを利用する利用者の割合は、厚生労働省発表の資料によると、2019年と2009年を比較して6.42%増加しており、他の内科疾患と比較しても高い増加率となっています。

▼参考資料はコチラ
厚生労働省「在宅医療(その2)」

精神科特化の訪問看護のこれからの需要

精神疾患の方へ訪問看護を提供している訪問看護ステーションや、精神科特化の訪問看護ステーションの数は、前述した利用者の増加からも増えているといえます。

今後、地域包括ケアシステムの構築が進むことから、さらに精神科訪問看護の需要が高まっていくでしょう。

精神科特化の訪問看護における看護師の役割

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精神疾患の利用者さまにとって、地域で安心して生活していくために重要な役割を果たすのが看護師の役割です。

精神科訪問看護における重要な看護師の役割は、主に下記のものがあります。

  • ●多職種連携
  • ●継続的な精神科医療の提供
  • ●内服指導

それぞれ解説していきます。

多職種連携

多職種と連携しながら、業務内容でも簡単に解説した医療証や精神障碍者医療福祉手帳の更新などの社会資源の活用を行っていきます。

医療証や精神障害者医療福祉手帳、自立支援制度などの精神疾患の方が医療を受けやすくするための制度が存在します。しかし自分では手続きをすることが難しく、受けられるはずの制度を受けていなかったり、更新手続きができなかったりする方がいるのが現状です。

また、在宅で生活を続けるためには、金銭的な支援も必要です。精神障害の方が受けられる場合がある障害年金や、生活保護費などを複雑な手続きから申請や受給ができていない場合があります。

そういった利用者さまを社会的側面から支えるには、ケアマネージャーや役所などとの連携、医師へ必要書類を依頼するためにクリニックや病院と連携をとるなど多職種連携が重要です。

利用者さまの情報を他の職種へ伝え、場合によっては利用者さまの代理で、役所などへ手続きや申請に出向くこともあります。

▼関連記事はコチラ
多職種連携における看護師の役割とは?

継続的な精神科医療の提供

精神疾患の方の中には通院が難しい方も多いです。たとえば、うつ病の身体症状や精神症状が強く表れ、病院に行くことが辛い方や、統合失調症の方では強い妄想から通院や内服を拒否する場合もあります。

利用者さまの状況をクリニックや病院の医師へ報告したり、内服や受診の必要性を利用者さまの訴えを傾聴しながら伝えたりといったことを行います。

場合によっては通院同行をしたりケアマネージャーへ通院同行を依頼したりすることで、継続的な精神科医療の提供をするのも看護師の役割です。

内服指導

精神疾患の方は、強い妄想や疾患への理解が乏しいことから、継続的な内服が難しい場合もあります。

精神疾患において継続的な内服は、症状を安定させ在宅で過ごしていくためにも非常に重要です。また拒否だけでなく、副作用で悩んでおり内服ができていないケースもあるため、そういった利用者さまの訴えや状況を訪問看護の中で把握し、医師へ伝える必要もあります。

そして精神症状が強い方でも内服しやすいように、服薬カレンダーを見やすくしたり、訪問のタイミングで一緒に内服してもらったりと、さまざまな工夫をするのも精神科看護の一つです。

利用者さまの内服状況を把握して、内服の必要性を伝えたり工夫したりする役割は、訪問看護の非常に大切な役割といえます。

まとめ

訪問看護といえば、内科疾患が主なイメージが強く、まだまだ精神疾患の方への訪問看護のイメージは薄いかもしれません。しかし実際は訪問看護を利用する精神疾患の方は多く、今後も精神科の訪問看護師の需要は高まっていくでしょう。

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