グリーフケアアドバイザーとは?仕事内容や看護とのつながりを紹介
記事掲載日:2022/02/10
医療に関わる仕事をしていると、大切な人の死で精神的ダメージを負った方を目にする場面も多いのではないでしょうか。
そんな場面で活躍するのがグリーフケアアドバイザーです。大切な方との死別で苦しむ人を助けるスペシャリストですので、看護師の仕事とも関連性が高い仕事といえるでしょう。
今回は、グリーフケアアドバイザーの概要や仕事内容、なり方や訪問看護との関連などについて解説します。
グリーフケアアドバイザーとは
グリーフケアアドバイザーについて確認する前に、グリーフケアについて知っておきましょう。
グリーフケアとは
家族や恋人、友人などを失うと、深い悲しみや寂しさを感じながらも立ち直ろうと奮闘し、不安定な状態となります。この状態を「グリーフ」と呼びます。グリーフの時期に睡眠障害や摂食障害、鬱の症状で苦しむ方も少なくありません。また、一度回復しても数年後に症状が再発する場合もあります。
グリーフケアとは、大切な人との死別を経てグリーフの時期にある遺族の支援やケアのことです。耐えがたい悲しみに寄り添い、苦しみを軽減して前を向けるようにサポートする重要なケアといえるでしょう。
グリーフケアアドバイザーとは
グリーフケアアドバイザーとは、2008年設立の一般社団法人日本グリーフケア協会が認定する資格です。認定を受けた方々は死別による悲しみ・喪失感を抱える遺族に対するケアを行います。グリーフから回復していく遺族の成長に携わることができる、やりがいのある仕事です。
▼参考資料はコチラ
日本グリーフケア協会「グリーフケアを社会に生かすアドバイザー認定講座」
グリーフケアアドバイザーの役割やメリット
グリーフケアアドバイザーの役割は、遺族がグリーフを抱えている時期に寄り添い、回復して前を向くまで支援を続けることです。
我慢強い方は特に、悲しみや苦しみを隠してしまうケースも少なくありません。グリーフケアアドバイザーは、遺族がありのままの感情を表に出して故人の死を受け入れた上で回復し成長していくまでをサポートします。
グリーフケアアドバイザー取得のメリット
グリーフケアを取得するメリットは、看護師としての仕事のやりがいが増すことが挙げられます。
看護師にとって、患者さまのケアをするだけでなく周囲の方々の心に寄り添うことも重要な仕事です。グリーフケアアドバイザーの資格取得により、患者さまを大切に思う方の心情についても理解が深まり、信頼を得られるでしょう。
また、取得期間が短く比較的挑戦するハードルが低い資格ながら、仕事の幅を広げやすいこともメリットです。医療機関に遺族のケアを行う場所がある場合はそこで活躍できる可能性も高いでしょう。
また、看護師として思い入れのある患者さまを看取る経験をして、喪失感や辛さを感じてしまう場合もあります。グリーフケアについての学習は自分自身が前向きに働くためにも役立つのではないでしょうか。
グリーフケアアドバイザーになる方法
グリーフケアアドバイザーは、2級(初級)、1級(中級)、特級(上級)の3段階に分かれています。
まずは日本グリーフケアアドバイザー協会のホームページから申し込みをして、年2回東京で開催される講座の受講が必要です。
その後各級で修了認定をもらうと資格取得となり、グリーフケアアドバイザーになることができます。
認定試験などはないため、比較的挑戦しやすい資格といえるのではないでしょうか。各級で学ぶ内容や受験資格については、以下で解説します。
グリーフケアアドバイザー2級(初級)
2級は、18歳以上の方であれば受講資格があります。費用は33,000円です。取得に必要な講習は1日。座学中心で、グリーフケアの基本、遺族の心情や援助の方法、注意点などを学びます。なお、2級ではIDカードは発行されません。
グリーフケアアドバイザー1級(中級)
1級の受講資格を持つのは、2級の修了認定を受けた方のみです。費用は55,000円です。1級の講座では、2級よりも実践的な講義があり、グループワークなども実施します。
講習期間は2日。学習内容も死を予期した遺族の苦しみや、より複雑な悲痛、グリーフケア実施のポイントやグループ療法などレベルアップした内容です。課題の提出があり、修了後にIDカードが発行されます。
グリーフケアアドバイザー特級(上級)
特級は、グリーフケアのワークショップや講座などを開催する方向けに実施されます。1級までの修了認定を受けた方の中で協会からの推薦を受けた方のみが受講の申し込みが可能です。申し込みにあたって、1級で提出したレポートも評価され、協会からの推薦についても重視されます。
特級の講習期間は3日間です。より実践的なスキルや深い知識の習得を目的に理解を深めます。徹底した演習や、実際のワークショップケア、現在のグリーフケアにおける問題や対処法、その実践などが主な学習内容です。1級同様、講座の修了認定を受けるとIDカードが発行されます。
グリーフケアアドバイザーが活躍する場所
グリーフケアアドバイザーは近年重要性が増しており、職場も様々です。具体的には、以下のような職場が挙げられます。
医療機関
看護師にとって身近な職場でもある医療機関は、患者さまが終末期を迎える場所の一つです。死に直面する方も多いため、グリーフケアアドバイザーの資格を持つ方が活躍できる職場となります。
介護施設
医療機関と同じく、介護施設も入居者が死を迎える場面が多い場所です。近年、医療機関で亡くなる方が減少傾向にあり、高齢者向け施設で死を迎える方が増えています。
亡くなった方の意向とご遺族の心情両方を理解し、悲しみを癒せるグリーフケアアドバイザーの存在により、救われる方が多いのではないでしょうか。
訪問看護
近年、医療機関や施設以外の場所での死を望む方もいるため、訪問看護の現場でグリーフケアが必要になる可能性も高いです。
患者さまの希望に沿ってご家族が介護して看取られた場合、思い入れが深い分感情も複雑になりやすいです。達成感、解放感などの感情がありながらも喪失感や後悔、悲しみを感じるなど、ご遺族の中で整理できないこともあるでしょう。正しい知識を持った上で適切なケアができるグリーフケアアドバイザーがありのままの感情を引き出すことで回復しやすくなるでしょう。
▼参考資料はコチラ
大阪医科大学看護研究雑誌 第10巻(2020年3月)「訪問看護におけるグリーフケアの現状と課題:文献検討」
グリーフケアアドバイザーの現状
現在、様々な理由からグリーフケアアドバイザーの重要性が増しています。高齢化による介護の負担増大により、被介護者の死をきっかけに介護者が喪失感に飲み込まれてしまうことも少なくありません。
また、新型コロナウイルス感染拡大の影響で十分な治療を受けられず死を迎えた方や遺体と対面することなく葬儀を終えた方のご遺族はやるせない感情と共に日常を過ごしています。このような背景から、グリーフケアの知見を得たいと考えている医療従事者の方も多いです。たとえば、上智大学は2010年にグリーフケア人材育成講座を開設しています。
グリーフケアが必要となる機会や学ぶ方は増えているものの、国内ではグリーフケアの制度や国家資格などが存在せず、普及しにくい点が課題です。医療や介護に関わっている方々から積極的に広めていくことで改善されるのではないでしょうか。
まとめ
ライフスタイルの多様化により、様々な死生観を持つ方が増えています。遺族のありのままの悲しみに共感・理解を示し、受け止めてくれる場所が少なくなり、グリーフケアはますます重要性を増していくでしょう。
看護師として働く中で、グリーフケアの必要性を実感した経験がある方から知識や技法を学び、積極的に活かしていきましょう。