地域医療構想について制度や取り組みを解説!看護師が担う役割とは?
記事掲載日:2022/12/28
地域医療構想という言葉を耳にしたことがあるものの、どのようなものなのか理解していない看護師も多いのではないでしょうか。地域医療構想とは、地域において必要な医療機能や病床を確保するために策定されたものです。
今回は地域医療構想について制度や取り組みを解説するとともに、看護師が担う役割についても解説していきます。
- 1. 二次医療圏と一致:42都道府県328区域
- 2. 複数の二次医療圏を統合:5県6区域
- 3. 二次医療圏を分割:1県7区域
- 地域医療介護総合確保基金の活用
- 病床機能報告制度
- 地域医療構想調整会議
- 高度急性期
- 急性期
- 回復期
- 慢性期
- 慢性期や回復期病棟での看護
- 多職種連携
- 訪問看護ステーションや在宅系サービスでの支援
地域医療構想とは
地域医療構想とは冒頭でも解説したように、区分けされたそれぞれの地域において必要な医療機能や病床が確保されることを目標とした構想です。
2014年6月に制定された「医療介護総合確保推進法」という法律をきっかけに、地域医療構想が制度として発表されています。 そして地域医療構想の考えられた背景には、2025年問題といわれる問題が存在しています。
▼参考資料はコチラ
厚生労働省「地域医療構想策定ガイドライン」
地域医療構想の背景にある2025年問題
総務省の統計によると、2025年には団塊の世代といわれる世代全員が、75歳以上にあたる後期高齢者になるといわれています。
団塊の世代は第一次ベビーブームに生まれた世代であり、この世代が後期高齢者になることで後期高齢者の人数は2,180万人にまで達するとされています。
こうした後期高齢者の増加によって起こる、介護や医療などのさまざまな問題を指すのが「2025年問題」です。
さらに厚生労働省は、2025年には世帯主が65歳以上の世帯が約 1,840 万世帯まで増加し、一人暮らしの高齢者は37%にも及ぶ約 680 万世帯に達すると発表しています。このデータから2025年問題には、地域医療や在宅医療における問題も含まれることが想定できるでしょう。
▼参考資料はコチラ
総務省「高齢者の人口」
厚生労働省「今後の高齢化の進展~2025年の超高齢社会像~」
全国341の「構想区域」
前述した2025年問題に対応するためにも、地域医療構想において全国341の構想区域に地域を区分けしました。2017年に厚生労働省が発表した「各都道府県の地域医療構想について」の資料では、構想区域の設定は下記のように行われています。
区域ごとに2015年時点での使用病床と、2025年に必要と想定される高度急性期・急性期・回復期・慢性期それぞれの病床機能を比較し、構想区域を分けています。
▼参考資料はコチラ
厚生労働省「各都道府県の地域医療構想について」
地域医療構想を実現するための取り組み
地域医療構想を実現するために、すでにいくつかの取り組みが行われています。厚生労働省の地域医療構想策定ガイドラインからは、下記の3つがあげられます。
それぞれ解説していきます。
地域医療介護総合確保基金の活用
厚生労働省が掲げている「地域包括ケアシステムの構築」と「効率的かつ質の高い医療提供体制の構築」が、2025年問題の解決には必要です。
このケアシステムと医療提供体制の構築のための費用として、2014年に「地域医療介護総合確保基金」という財政支援制度が各都道府県に制定されました。
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地域包括ケアシステムで看護師に求められる役割とは
▼参考資料はコチラ
厚生労働省「地域医療介護総合確保基金」
病床機能報告制度
そもそも病床の機能は、下記の4つに大きく分類されます。
これらの病床機能の現状と今後の体制における課題などを報告する「病床機能報告制度」が、2014年改正の医療法によって義務として制定されました。 毎年10月の報告となっており、2021年度の報告は終了しています。
▼参考資料はコチラ
厚生労働省「病床機能報告制度」
地域医療構想調整会議
地域医療構想策定ガイドラインから地域医療構想調整会議といって、地域医療構想を実現するための医療従事者や研究者、有識者による会議の場を設けることになっています。
前述した病床機能報告制度によって報告されたデータを共有したり、病床機能の評価をしたりする場でもあります。
各都道府県で実施されているため、実施状況等の詳細は都道府県別のページを確認してみてください。
▼参考資料はコチラ
厚生労働省「地域医療構想策定ガイドライン」
地域医療構想における看護師の役割
ここまで解説してきた地域医療構想における、看護師の役割を解説します。 看護師が担う役割は下記の3つが考えられます。
それぞれ理由とともに役割をみていきましょう。
慢性期や回復期病棟での看護
高齢者の増加に伴い、在宅に注目が行きやすいですが、在宅復帰のために重要な慢性期や回復期の病棟における看護師の需要も高まってきます。
慢性期や回復期の病棟でも適切な質の医療を提供するためには、看護師の存在は必要不可欠です。
多職種連携
病院で療養した後、高齢者は在宅でさまざまなサービスや介護制度を利用しながら暮らしていくことになります。
その中でケアマネージャーやメディカルソーシャルワーカーなどの、地域と医療機関を繋ぐ役割を果たす多職種との連携は重要です。そして場合によっては、訪問看護ステーションや老人介護施設などへの情報提供も看護師の役割になってくるでしょう。
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多職種連携における看護師の役割とは?
訪問看護ステーションや在宅支援系サービスでの支援
在宅で過ごす高齢者が増加することが予想されるため、訪問看護ステーションやデイサービス、訪問入浴などの在宅支援のサービスの需要も高まっていくと考えられます。
訪問看護ステーションで勤務する看護師は、病棟と違った臨機応変な対応が求められたり、デイサービスや訪問入浴などの在宅支援サービスでは介護業務の対応が多く求められたりするといった特徴があります。
まとめ
ここまで地域医療構想の制度や取り組みに加え、地域医療構想における看護師の役割も解説しました。これからの時代の社会問題を知りながら、看護師としての需要を把握していくこともご自身のキャリアを考える上で非常に重要です。
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