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グリーフケアとは?看護師が押さえたいポイントとともに解説

記事掲載日:2022/04/14

グリーフケアとは?看護師が押さえたいポイントとともに解説

看護師として働いていると、深く関わった患者さまが亡くなる経験をすることもあるでしょう。

近年、死別を経験した方が喪失感から立ち直るためにサポートを行う「グリーフケア」が注目を集めています。遺族のケアはもちろん、自身にとって思い入れのある患者さまが亡くなり喪失感に襲われた際にもグリーフケアの知識は役に立つでしょう。

今回の記事では、看護師が知っておきたいグリーフケアのポイントを中心に解説します。

グリーフケアとは?

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「グリーフケア」とは、大切な人の死により喪失感や悲しみのなかにいる人に対しサポートを行うことを指します。「グリーフ」は、悲しみ、嘆きを意味する英単語です。通院による療養、カウンセリングやグループワークによる治療や日常のなかで行う対処療法など、方法はさまざまです。

悲しみから回復する方法や回復にかかる時間は人それぞれです。一時的に感情が落ち着いたとしても、数年後に再び悲しみに襲われる可能性もあります。回復と後退を繰り返す症状に対して、周囲は理解を示してサポートすることが必要です。

グリーフケアの必要性

闘病中などで死が予想できていても、大切な人との別れによる喪失感と立ち直って前を向きたいという思いの狭間で苦しむ人は少なくありません。しかし近年、グリーフケアを必要とする人が抱える複雑な感情を共有できる相手が近くにいる環境は失われつつあります。

家族や友人が少ないために一人で苦しみに向き合う人や、周囲に家族や友人がいたとしても感情を共有できず自分を追い詰めてしまう人も多いのです。適切な知識をもたないために、複雑な感情を理解できない周囲からの言葉や激励がプレッシャーとなる場合もあるでしょう。こうした状況のなかで、正しいグリーフケアを行う必要性が増しています。

グリーフケアが必要な基準

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大切な人を亡くしたことによる深い悲しみは、心、身体、行動に様々な影響をもたらします。以下では、グリーフケアが必要な人にあらわれる症状を詳しく説明していきます。

グリーフケアを必要とする人に見られる症状

精神面であらわれる症状としては、悲しみや寂しさを感じる、ふとした瞬間に絶望感や不安に襲われる、罪悪感や自責の念を強く覚えるなどの症状があります。

症状が重い場合は周囲に敵意を向ける、幻覚を見る人もいるようです。症状が軽い場合でも、これらの症状に当てはまる場合はグリーフケアの必要があります。

身体面では、睡眠障害や食欲・気力の減退、注意力の低下や頭痛、嘔吐、激しい動悸、アルコールや薬への依存などがあります。故人の行動の模倣、探索行動などを行うこともあるようです。日常生活に支障が出るほどの症状が出ている人に対しては早急にサポート体制を整えましょう。

グリーフケアの方法

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効果的なグリーフケアの方法は苦しんでいる人の性格や亡くなった人との関係性などによって異なります。様々な方法を知っておくと、グリーフケアが必要になった際に上手くサポートできるようになるでしょう。

悲しみに向き合う

グリーフケアで重要となるのが、悲しみを認めて受け入れ、乗り越えることです。自然な感情として認められるよう、グリーフケアを必要としている人の悲しみを肯定しましょう。悲しみを抑え込まないようアドバイスし、故人の話や抱えている感情について話してもらうのも一つの方法です。

同じ境遇にある人と接点を持つ

悲しみを乗り越えて前を向くためには、喪失感や寂しさなどの感情を外に吐き出す必要があります。複雑な感情をそのまま吐露できる環境が理想的です。

死別に苦しむ人たちの会などに参加し、同じ境遇にある人と話せると、自身の感情も出しやくなるでしょう。

故人を弔う機会を作る

葬儀の場は、悲しみを吐露しやすい状況であるため、感情を外に出す良い機会でもあります。また、故人と深く関わった人が集まるため理解者を見つけやすいでしょう。

その後の法要やお墓参りなども、残された人のセルフケアに大切な行動です。また、ライフスタイルが多様化したことで弔いの様式も自由度が増しています。自分らしい弔いの形の模索もグリーフケアの一つと言えるしょう。

仕事や趣味など熱中できるものを見つける

しっかりと悲しみに向き合うことも大切ですが、立ち直るためには悲しみから一旦離れて未来を生きていくための時間作りも大切です。

苦しんでいる人が好きなことや将来のためになる仕事などに集中できるよう周囲がサポートすると良いでしょう。

グリーフケアを行う際のポイント

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看護師としてグリーフケアを行うにあたって、押さえておきたいポイントを解説します。

悲しみを悪化させない

看護師としてグリーフケアを行う場合、遺族の悲嘆を深くしないよう注意する必要があります。グリーフを抱えている人の感情は複雑で、深く介入する、明るい言葉をかけるなどのサポートが逆効果になる場合も多いのです。遺族の様子を観察し、さりげなく寄り添えるサポートを心がけましょう。

時間を取れない場合は電話の活用も

訪問看護でケアをしていた患者さまが亡くなった際に、家族のもとへ伺ってサポートする時間がとれない場合もあるかもしれません。

そういった状況では、電話で話を聞くなど無理のない範囲でグリーフケアを行いましょう。電話越しであっても関係性の深い看護師が話を聞くことで、家族が悲しみから抜け出すための効果的なサポートとなるでしょう。

グリーフケアと訪問看護

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近年需要が急増している訪問看護でも、グリーフケアは重要です。訪問看護におけるグリーフケアについて詳しく確認していきましょう。

訪問看護先でグリーフケアを行うメリット

訪問看護先でグリーフケアを行うメリットは主に3つあげられます。

1.療養生活の段階から長期的なサポートが可能

訪問看護開始時から患者さまの家族に亡くなる可能性をお伝えし、死を意識して看護・サポートをすると、家族も心の準備がしやすくなるでしょう。患者さまの生前から看護師として会話をするとグリーフケアにも効果があると言われています。患者さまの死後に感じる喪失感は避けられないとしても、回復を早められるかもしれません。

2.患者さまや家族との関係を深めたうえで共感力の高い支援ができる

訪問看護では、病院でのケアと比べ家族と関わる機会が多くなります。場合によっては家族とともに患者さまを看取る経験をするでしょう。死別の瞬間の共有を通したり、患者さまや家族と深い関係を築けたりすることで、最適なグリーフケアの方法を選択できるようになるでしょう。

3.看護師としての経験値向上

訪問看護先でのグリーフケアは長期的になる場合もあります。患者さまの家族の心情に長く寄り添い、グリーフケアの方法を実践的に学べる機会です。病院とは違った、貴重な経験を積み看護師として大きく成長できるでしょう。

訪問看護におけるグリーフケア

訪問看護では、療養生活が始まった時点で死の可能性について話しておきましょう。患者さまが突然死を迎えると、家族は動揺し気持ちの整理に時間がかかってしまいます。

死の兆候でもある症状とともに説明するとご家族も時間をかけて受け入れやすくなるでしょう。患者さまの死が近づいたら、家族や近しい人が立ち会えるよう早めに連絡を入れることが大切です。

死に立ち会えないと死を受け入れられず、悲しみが大きくなってしまいます。亡くなった直後についても、死後の処置は大切ですが、患者さまと家族の時間への配慮を忘れないようにしましょう。家族の心情に寄り添い行動することで、家族が抱える悲しみが軽減されるでしょう。

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まとめ

今回は、患者さまの死に立ち合うことも多い看護師が知っておきたいグリーフケアについて解説しました。看護師自身も、思い入れの深い患者さまが亡くなった際の喪失感を抱く可能性は少なくありません。

悲しみから無理なく回復し、前向きに過ごすためにもグリーフケアの知識をもっておくことは大切です。また、患者さまの家族との接点が多い訪問看護でも、グリーフケアの知識やスキルは大いに活かせます。看護師として患者さまの死後も適切なサポートができるよう、グリーフケアについて学び、スキルアップしていきましょう。

▼ナースステップについて詳しくはコチラ
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