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特別養護老人ホーム(特養)で働く看護師の仕事内容とは?働くメリット・注意点を解説

記事掲載日:2020/12/03

特別養護老人ホーム(特養)で働く看護師の仕事内容とは?働くメリット・注意点を解説

特養は特別養護老人ホームの略称です。介護職だけでなく、看護師もたくさん働いています。医療機関とは違った働き方やメリットがあり、人気の就職先の一つです。

今回は特養で働く看護師の仕事内容と働くために必要なスキル、そして働くメリットや注意点をまとめて解説します。

特養(特別養護老人ホーム)とは

特養(特別養護老人ホーム)は常に介護を必要とする、要介護3以上の高齢者が入居し、食事や入浴、トイレなどの介護を受けながら生活をする施設です。介護保険法にもとづく施設で、介護老人福祉施設とも呼ばれています。特別養護老人ホームは老人福祉法による名称ですが業態は同じです。市区町村や社会福祉法人が運営しています。

特養は介護保険が適用されるため、看護師の配置が義務づけられています。介護施設に勤務する看護師は看護職員と呼ばれます。

特養の入居者はどんな方?

特養に入居できるのは、原則として要介護3以上の高齢者に限られます。

食事や排泄、入浴などの多くの場面で介護が必要となる人たちです。

要介護者の区分は要介護1~5の5段階に区分され、以下の違いがあります。

介護が必要な度合い 状態
要介護1 歩行が不安定で、食事・排せつなどの生活動作に「部分的な介助」が必要である状態
要介護2 歩行が不安定で、食事・排せつなどの生活動作に「軽度の介助」が必要である状態
要介護3 立ち上がりや歩行・食事・排せつ・入浴の際に「全面的な介助」が必要である状態
要介護4 食事・排せつ・入浴といった「日常生活全般において全面的な介助」が必要である状態。要介護3と比べ、よりADL(日常生活動作)の低下が見られる
要介護5 日常生活全般において全面的な介助が必要であり、加えて「完全に寝たきりで普段の意思の疎通」も困難な状態

特養では食事や排泄、入浴などの多くの場面で、全面的な介護が必要となる要介護者をケアすることになります。

入居期間は設けられていないため、終身利用を目的として入居する方が多くいます。

老健・老人ホームとの違いは?

特養と似た施設として老健(介護老人保健施設)と、老人ホーム(有料老人ホーム)があります。それぞれの利用目的やサービス内容は異なります。

老健(介護老人保健施設)

老健(介護老人保健施設)は在宅復帰を目的としたリハビリ施設です。そのため入居期間は3ヶ月~6ヶ月を目安としており、終身利用ができません。入居者の条件も要介護1から可能です。身の回りのことはある程度自分でできる人から、介護が必要となる人までさまざまです。

老人ホーム(有料老人ホーム)

一般的に老人ホームと呼ばれているものは、有料老人ホームを指します。自治体や社会福祉法人が運営する特養と異なり、主に民間企業が運営しています。

主に民間企業が運営するため、ホームごとに対象者や入居基準、提供されるサービスが異なります。

施設 特養(特別養護老人ホーム) 老健(介護老人保健施設) 老人ホーム(有料老人ホーム)
運営 地方自治体または社会福祉法人 医療法人または社会福祉法人 主に民間企業
介護度 要介護3~ 要介護1~5 要介護1~5
入居目的 自分らしく生活する 在宅復帰を目指す 施設によって異なる

特養の看護師配置基準について

施設ごとに看護師の配置基準が定められており、特養は入居者の数に応じて、以下の決まりがあります。

入居者数 必要な看護職員(常勤換算)
~30 1人以上
30~50 2人以上
50~130 3人以上

入居者3名につき介護職員と看護師の総数が1人以上いなければならないため、30人規模の入居者を1人でケアすることはありません。なお医師については入所者100人につき1人配置することとなっています。常勤・非常勤は問いません。

特養で働く看護師の仕事内容

特養で働く看護師は、具体的にどのような仕事をしているのでしょうか。主な内容を3つ見ていきましょう。

入居者の健康管理や医療行為

まずは要介護者の健康管理や医療行為です。

入居している方々の血圧や体温などのバイタルチェック、口腔ケアなどのほか、内服薬の管理、軟膏の塗布、ケガに対する処置などを行います。

また医師の指示を受けて採血や点滴、投薬、たん吸引、褥瘡の処置などの医療行為も、特養で働く看護師の主な仕事です。

緊急時の対応

利用者の体調が急変した、または転倒などで大きなケガをした場合などの緊急対応もします。状況を冷静に判断して、病院搬送などの手配を行わなければいけません。

入居者の介護業務

食事や排泄、入浴などの介護業務は基本的に介護職員が行いますが、勤務先によっては看護師もフォローに入ります。

外来受診・入退院の付き添い

特養は常勤医師の配置義務がないため、医師が常駐している施設は多くありません。そのため、看護師が入居者の外来受診・入退院の付き添い・説明をする場合もあります。

イベント・レクリエーション活動

特養はイベントやレクリエーションが充実している施設が多く、看護師も参加し、サポートに入るケースもあります。

看取りケア

特養は終身施設のため、施設で亡くなる高齢者もいます。厚生労働省によると、自宅での看取り・療養を希望する割合が0.4%に対して、施設での看取りを希望する家族の希望46.6%もあります。今後高齢者が増加する日本においては「看取りケア」の重要性が高まると言えるでしょう。看取り加算を取り、看取りケアに力を入れている施設も数多くあります。

▼参考資料はコチラ
厚生労働省「【テーマ1】 看取り 参考資料」

特養の看護師にはコミュニケーション能力が必要

健康管理や医療行為をするためのスキルはもちろんのこと、特養の看護師にはコミュニケーション能力も求められます。

高齢者とのコミュニケーション

まずは高齢者とのコミュニケーションです。

特養は高齢者にとっての生活する場所になります。安心して毎日の生活を送れるように、関わるスタッフには円滑なコミュニケーション能力が求められます。

笑顔を絶やさずに話しかけて、相手からも話しかけやすい雰囲気を作ることが大切です。

介護職員や他職種とのコミュニケーション

介護職員や他職種とのコミュニケーションも重要です。

特養の仕事はチームワークが必須です。看護師以外にも多くのスタッフが働いており、チームとなって仕事を進めていかなければいけません。
互いの業務内容を尊重し、情報交換を密にして仕事をすることが、利用者への良いサービス提供につながっていきます。

特養の看護師として働くメリット

医療機関と比較して、特養の看護師として働く主なメリットは次の3つです。

基本的に夜勤がない

一つ目は基本的に夜勤がない点です。特養は24時間施設ではあるものの、夜間は看護師の配置義務がありません。公益社団法人 日本看護協会が発表している「特別養護老人ホーム・介護老人保健施設における看護職員実態調査報告書」によると、回答者のなかで「夜間勤務がない」の割合は 68.7%になります(無回答が25.2%)。

シフトは施設によってさまざまですが、日勤中心となるため、生活リズムを保って働くことが可能です。ただしオンコールはあります。しかし、電話対応で終わることが多く、実際に施設まで駆けつける機会は少ないと言えます。

また急な入退院など、突発的な業務が発生しづらいという特徴もあります。

体力的な負担が少ない

最後は体力的な負担が少ないことです。バイタルチェックや内服薬の管理、軟膏塗布などの健康管理が主な業務なので、医療機関のように動き回ることがありません。

体力を大きく消耗することがないことから、ブランクのある人、または年配の人でも働きやすい環境だと言えるでしょう。

入居者とじっくりと関われる

特養はリハビリや治療のための一時的に利用する施設ではありません。そのため、数年にわたって入居者とかかわることになります。つまり、入居者一人ひとりの生活に長期的に向き合って仕事が可能です。

▼参考資料はコチラ
公益社団法人 日本看護協会「特別養護老人ホーム・介護老人保健施設における看護職員実態調査報告書」

特養の看護師として働く際の注意点

さまざまなメリットがある特養の看護師ですが、いくつかの注意点があるのでチェックしておきましょう。

看護師としてのスキルアップが難しい

特養で働くと看護師としてのスキルアップが難しいのが現状です。利用者の健康管理業務が多く、医療行為も採血や点滴、褥瘡処置などの限られたものばかりとなるため、看護スキルを磨く機会は少なくなってしまいます。

オンコール対応が必要

2つ目はオンコール対応が必要な点です。日本看護協会の同報告書によると、勤務先の施設に「オンコール体制がある」と回答した看護職員は、91.8%に及びます。また、施設によって異なりますが、月の平均待機回数は9.1回です。

ただし、オンコール待機中に実際に電話対応した回数は「1~4回」の割貝が 46.5%と一番高く、平均の電話対応回数は 2.4 回/月になります。またオンコール待機中に、施設からの呼び出しに応じて出勤した回数(1か月あたり)については、「0回」が 53.5%、「1回」20.0%と全体の70%以上を占めています。

実際に電話対応や出勤対応をする回数は少ないと言えます。しかし人によってはいつ連絡が来るか分からない状況で緊張するかもしれません。

▼参考資料はコチラ
公益社団法人 日本看護協会「特別養護老人ホーム・介護老人保健施設における看護職員実態調査報告書」

入居者の最期に寄り添い、看取る覚悟が必要

前述の通り、特養を「終の棲家」として入居される方が多くいます。つまり、入居者の最期に携わる機会が多くなるということです。入居者を看取る覚悟をした上で、看護師としてどのような看取り看護ができるのかどうかを考えることも重要です。遺族に対するケアである、「グリーフケア」も欠かせません。

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特養で働く看護師の給料はいくら?

ナースステップで特養勤務の看護師求人を調査したところ 、東京都で月給25万~35万円でした。年収換算で400万~450万円です。

夜勤手当てがない分、医療機関と比べると給料が安い傾向にありますが、生活リズムを保ちながら働けるのは魅力です。

またパートの場合は時給1,500円からが相場となっています。


2020年11月時点のナースステップ掲載求人をもとに平均値を出しています。

まとめ

特養で働く看護師の主な仕事はバイタルチェックや服薬管理、採血、点滴、介護業務などさまざまです。夜勤がないため生活リズムを保ちやすく、また定時で帰れることからプライベートも大切にできるでしょう。

医療機関とは違ったスキルが求められますが、長く働ける職場として人気を集めています。

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