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地域包括ケアシステムで看護師に求められる役割とは

記事掲載日:2022/04/28

地域包括ケアシステムで看護師に求められる役割とは

1970年に「高齢化社会」、1995年に「高齢社会」となった日本は、その後まもなく2007年に「超高齢化社会」を迎えました。

高齢者の人口割合は増え続け、医療・介護の現場では人手不足などの課題に直面しています。

そこで近年注目されているのが「地域包括ケアシステム」です。本記事では「地域包括ケアシステムの基本的な内容から、看護師に求められる役割まで解説します。

地域包括ケアシステムとは

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地域包括ケアシステムとは、超高齢化社会を見越して社会保障制度を持続させるために「医療」「介護」「生活支援・介護予防」「住まい」、4つの要素が一体となって地域全体で支えあう仕組みです。「地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律」、通称「医療介護総合確保促進法」の第2条では、以下のように定義されています。

"「地域包括ケアシステム」とは、地域の実情に応じて、高齢者が、可能な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、医療、介護、介護予防(要介護状態若しくは要支援状態となることの予防又は要介護状態若しくは要支援状態の軽減若しくは悪化の防止をいう。)、住まい及び自立した日常生活の支援が包括的に確保される体制をいう。"

地域包括ケアシステムを構成する「医療」「介護」「生活支援・介護予防」「住まい」4つに関係する機関・施設や取り組みは以下になります。

医療

  • ・急性期病院
  • ・亜急性期・回復期リハビリテーション病院
  • ・地域包括ケア病棟
  • ・かかりつけ医
  • ・地域の連携病院

介護

  • 【在宅系サービス】
  • ・訪問介護・訪問看護・通所介護
  • ・小規模多機能住居介護
  • ・短期入所生活介護
  • ・24字か対応の訪問サービス
  • ・複合型サービス
  • など
  • 【施設・居住系サービス】
  • ・介護老人福祉施設
  • ・介護老人保健施設
  • ・認知症共同生活介護
  • ・特定施設入所者生活介護
  • など

生活支援・介護予防

  • ・老人クラブ
  • ・自治会
  • ・ボランティア
  • ・NPO

住まい

  • ・自宅
  • ・サービス付き高齢者向け住宅
  • など

このように、多種多様な関係者と連携し、チームで医療や介護サービスなどを提供するのが地域包括ケアシステムの特徴です。

地域包括ケアシステムが必要な背景

近年、日本では「2025年問題」が取りざたされています。2025年問題とは、第一次ベビーブーム(1947〜1949年)に生まれた「団塊の世代」における高齢者の年齢が75歳となり、後期高齢者が大幅に増加する問題です。2000年では900万人だった後期高齢者が2025年には2200万人弱まで増加すると言われています。人口における75歳以上の割合も2000年の7%から17%と、10%上昇する想定です。

つまり、医療・介護の需要が増加するにも関わらず、その対応に必要なリソースが追いついていない状況です。さらに、現在の病床数も限りがあるため、在宅療養や介護へのニーズが高まっています。

しかし、後期高齢者が急増する大都市、人口が減少する地方都市など、少子高齢化の実情には地域差が生じています。また、年齢構成や社会資源の整備状況、産業も地域によって異なるため、国の一律の仕組みではなく都道府県が支援し、市町村が自主・主体的に地域特性に応じた体制の構築が必要です。

▼参考資料はコチラ
厚生労働省『地域包括ケアシステム』
総務省統計局『敬老の日」にちなんで-/1.高齢者の人口』

中核となる地域包括支援センター

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地域包括ケアシステムの実現に向けた中核的な機関が「地域包括支援センター」です。市町村から「包括的支援事業」の委託を受けて地域住民の心身の健康保持と生活の安定のために援助を行います。包括的支援事業とは、以下の業務を指します。

総合相談支援業務

高齢者からの相談を受け、相談者にとって必要なサポートや制度を紹介する業務です。

介護予防ケアマネジメント業務

介護予防ケアマネジメント業務は、要支援の認定を受けた高齢者へ、介護予防のためのケアプランの作成や、将来的に要介護・要支援状態になる可能性がある高齢者へ、市町村が実施する介護予防プログラムなどの紹介・参加支援があります。看護師が主に担当するのはこの業務です。

権利擁護業務

お金の管理や各種契約などに不安がある高齢者や、虐待被害にあっている高齢者へ、成年後見制度の活用や虐待の予防・早期発見などを実施し、権利を守るための業務です。

包括的・継続的ケアマネジメント支援業務

包括的・継続的ケアマネジメント支援業務は、主任ケアマネジャーが主体となって、ケアマネジャーへの指導・相談、「地域ケア会議」の開催、地域ネットワークづくりなどを実施します。地域ケア会議とは、地域包括支援センターまたは市町村が主催する地域住民の総合相談の実施や、地域ニーズなどを把握するために地域の医療・介護に関わる多職種が参加する会議です。

▼参考資料はコチラ
地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律 | e-Gov法令検索

地域包括ケアシステムにおける看護師の役割

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地域包括ケアシステムにおいて、看護師は訪問看護の側面で重要な役割があります。訪問看護師は、訪問看護ステーションのほか、病院やクリニックなどに在籍して、地域で在宅医療を支えていきます。具体的な訪問看護の仕事は以下になります。

  • ・健康状態の観察・管理
  • ・ご家族の支援・相談
  • ・医師の指示に基づく医療処置
  • ・日常生活のサポート
  • ・認知症と精神疾患のケア
  • ・リハビリ
  • ・ターミナルケア

訪問看護が担う地域包括ケアシステムでの役割は、他にも以下3つがあります。

チーム連携

訪問看護では、病状や介護状態などを総合的に鑑みて、患者さまの意思を尊重しながら看護計画を立て、看護を行います。そのため、患者さまのニーズを満たすためにはホームヘルパーをはじめとした介護スタッフや医学療法士などのリハビリテーション専門職などと連携し、チームとして効果的なサービスの提供をする必要があります。看護師は医療的な視点だけでなく、心理面・生活面など総合的な視点から患者さまを支援できる点が強みになります。

この他、在宅ケア推進のため、地域の保健・医療・福祉サービス機関の看護師同士のネットワークの構築など、さまざまな連携が求められます。

チームアプローチは、従来から医療において重要な取り組みです。しかし、地域包括ケアシステムではより多様な関係者・機関と関わらなければなりません。それは患者さまへの支援に留まらず、地域全体の課題解決へ向けて、医療機関以外にも及びます。例えば、行政機関や地域のボランティア団体、住民の生活に直結している事業者などが挙げられます。

自立支援・予防的看護への対応

介護予防の観点では、患者さまの意思を尊重しつつも、予防的看護が重要です。例えばサルコペニアや、ロコモティブシンドローム、フレイル、認知症の重度化など、老化によって引き起こされやすい症状が挙げられます。これらの予防のために生活習慣改善の助言や相談対応が訪問看護師に求められます。

医療サービスへの支援

現状ではまだまだ地域包括ケアシステムの整備は不十分だと言えます。そこで看護師は地域に不足している・まだないサービス提供へ向けた連携が必要になります。例えば地域ケア会議への参画や、行政への働きかけ、多職種連携、ICTの活用などが挙げられます。

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訪問看護師の仕事内容や給料を解説

まとめ

近年耳にすることが増えた地域包括ケアシステムですが、政策論として取り上げられたのは意外にも2003年です。しかし、地域全体を通した連携以前に「医療と介護」の連携は不足しています。

いまだ多くの課題を抱える状態ですが、その課題を解決するためには看護師の活躍が必要不可欠と言えるでしょう。

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